首元に押し当てられた刀、上を向くとさっきの男の人と目が合った。


「なっ…ちょ、刀ッ…」
「貴様は誰だッ!!」


それはこっちが聞きたいよ!

とは思ったがそれは後に聞けばいい。
とりあえず今一番大事なのは私の命の確保だ。
このまま数センチ刀を動かすだけで、私の儚い命は散ってしまうかもしれないのだ。


「こ、この家の主ですが…」
「何?まず此処は何処だ!」
「えっと私の家です」
「そういうことを聞いているんじゃないッ!見たことの無いものばかりだ、此処は南蛮か?それとも日ノ本か?何処だ!!」

声を荒げる男の人。正直こんな朝早くから叫ぶのはやめていただきたい。
それに南蛮に日ノ本てえらく古い呼び名だ。やっぱり昔の人?
ちなみにここは普通に東京だ。
東京のマンションの一角。

「東京?何処だ其処は。日ノ本でそんな地名は聞いたことが無いぞ。」

この人には東京は通じないらしい。
本当に織田信長や豊臣秀吉の時代の方なんだろうか、それなら多分通じないんだろう。
東京って明治時代ぐらいにつけられた名前だった気がする。

「え…っと、そうだなぁ。江戸ってわかる?」
「ああ」
「場所的にはそのあたり」

あながち間違っていないはずだ。此処が江戸に当たるのかはしらないけれど。
そう答えると男は何かを考える様にして刀を下げた。
一応命の確保は出来たようだ。
けれど、刀は下げただけで刀身はむき出しになっている。

いや、鞘になおしてくださいよ。










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