ようやく帰宅。マンションの重い戸を押し開け、荷物を運び込む。 私一人では、何往復もかかるその作業も、三成さんのおかげで二往復で済んだ。さすが武士、だてに鍛えてない。 全ての荷物を運び終え、一息つく。 私が床にへたりこむように座ると、三成さんはテーブルの上にあった雑誌に興味を示した。 「これはなんだ」 「雑誌っていうの。読む?」 「書物か?」 「そう」 パラパラとページをめくる三成さん。 彼は写真に至極驚いていた。 ぱらぱらと雑誌をめくり、しばらくすると手が止まる。 彼はその中にある小話がお気にめしたらしく、食らいつくように読んでいた。 そんなに面白い特集でもあったのか。 またあとで読んでみよう。 …さて、しばらくぼーっとしていたが、久々にこんな買い物をしたからか、お腹がすいてしまった。 けれど晩御飯にはまだ早いし、…おやつにスパゲッティでも茹でようか。 レトルトのミートソース、まだあったし。 思い立ったらすぐ行動、とその場に立ち上がる。 しかし、ひとつ疑問が。 …三成さんはミートソースとか食べられるのだろうか。 昔の料理は薄味が多いときくし、味が濃いかもしれない。 戦国時代の人のこのみの味はわからない。 「三成さん、スパゲッティ食べる?」 「す、すぱげてー?」 発音がおばあちゃんのようだ。 たしかにこんな発音は日本語にないから、横文字に馴染みのない三成さんはこうなってしまうけれど。 「そう。外国の焼きそばみたいなかんじ。焼きそば、嫌い?」 「嫌いではない」 「ん、わかった」 私はスパゲッティをゆでにキッチンへ向かった。 そういえば、人と自宅で食事を共にするのは久しぶりだ。 思い出すと、足取りは自然と軽くなった。 ←→ |