05






あれから数週間。
ようやく学校が始まった。


届いた真新しい制服に身を包み、おかしなところはないかと全身鏡で自分を見る。
なんだか、制服に着せられているようなかんじがする、のは気のせいか。

友達はできるだろうか、部活はどうしようかな。
学校見学で、この学校を見た瞬間から此処に行くと決めていた。
校舎は綺麗だし部活も充実しているし制服もかわいいし。
この学校の全てに惹かれた、といっても過言ではない。
合格発表の日、私がこの学校に行けるだなんて夢みたいだと思った。
けれど、これは夢じゃないんだ!


「いってきます!」
「いってまいります」
「うん、気をつけて」


たまの休みだったらしい半兵衛さんと秀吉さんは私達を玄関で見送ってくれた。
休みと言っても出勤の必要が無いだけで、自宅で書類のサインをしなければいけないらしく、入学式には出席できないんだ、と半兵衛さんは申し訳なさそうに言った。
いやいや、そんな綺麗な顔をゆがめるのはやめてください。




家が同じだから、必然的に三成君とは隣に並んで登校することになる。
無言は気まずいので、いつぞやのように私はありきたりな話題を繰り出した。


「緊張するね!」
「知らん」
「三成君はやっぱり剣道部?」
「当然だ」


適当な雑談を交わしつつ、学校の門を潜る。
そこには私達と同じ沢山の新入生が居た。
新品の固い制服に身を包んだ沢山の新入生の中に、私と三年を共にする友人がいるかとおもうと自然と胸が弾む。

誰か仲良くなれそうな子がいないか、とキョロキョロしていると、後ろから声をかけられた。
正確に言うと、三成君が、だが。

振り向く前に、知り合い?と聞き返そうとしたが、三成君を見るなりそれができなくなった。
米神に血管を浮かばせて元々鋭い目をさらに吊り上げて、歯をぎりぎりと鳴らせている。
どうしたのと聞こうとすれば、彼は大声で


「イエヤスゥゥゥゥゥゥゥウウ」


と吼えた。
実際には叫んだだけだが、吼えたという表現が正しい、と思わせるような叫び声だった。
何があったのかと後ろを向くと、三成君に声をかけた少年、というべきかなんというか。
えらくサワヤカな青年がたっていた。
固そうな制服からして、私達と同じ新入生だろう。
三成君と同じ中学校だったんだろうか?


「朝から三成は元気だな、っと…ん?誰だ?」
「え、えーと、秀吉さんのトコに居候させてもらってる苗字名前です…。」
「ああ!成る程!そうかこんなかわいい子がか」


突然にかわいいと言われて顔が少し熱くなる。
いや普通にかっこいい人にかわいいだなんて言われたら、大体の女子は照れるもんだろう。


「イエヤスゥゥゥウ貴様!!!」
「そんなに朝から怒るなよ、な?名前も怖がってるじゃないか」
「いやべつに、」


怖がってはないですけど、
というか速攻名前呼びですか?
特に馴れ馴れしいとは思わなかったが、男の子に名前呼びをされることがめったになかったので、驚きつつ彼らのやり取りを見る。


「ああ、挨拶してなかったな。ワシは三成の友の徳川家康だ。よろしくな」
「誰が友だ!!貴様を友にした覚えは無い!!!!」
「え」


友達なの?友達じゃないの?


「そうだ名前、クラス発表は見たか?ワシら一緒のクラスだぞ」


…騒がしくなりそうだ。















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