03







半兵衛さんは部屋へ入ると、後ろの少年にも入るように促した。
写真で見たとおり肌と髪は真白で、目つきは鋭い。
私が見た姿と少しもかわらなかったけれど、どこか威圧感を感じる。


「紹介するよ、少しだけ話したよね。彼が三成君。君と同じ高校へ進学するから、仲良くしてあげてね。ほら三成くん、挨拶。」
「石田三成だ。」


彼は鋭い目つきのまま、一言自分の名前を言って自己紹介を終えた。
もっとも、此れが自己紹介と呼べるのかは知らないけれど。
俯きがちな石田君(で、いいのかな)の横で半兵衛さんが苦笑いした。


「ふふ、それと三成くん、彼女が名前ちゃんだよ。こっちには引越してきたばかりだから、色々教えてあげて」
「わかりました。」
「えっと、苗字名前です…。よ、よろしくおねがいします…。」


同い年のはずなのに何故か敬語になってしまう。
石田君は私の挨拶に反応を見せなかった。
少し、寂しい。


「まぁ三成は気難しい性格だけど悪い子じゃないから、ちょっと人見知りなんだけど根は優しい子だからね」
「半兵衛様、私は」
「三成も、せっかくなんだから。」
「…半兵衛様がそう仰るなら。」


じゃあ僕は此処で、と石田君を置いて半兵衛さんはまたどこかへ言ってしまった。
これはあれか、2人きりで話して親睦を深めろと。


「えっと、石田君」
「三成でいい」
「えっ、じゃあ三成君」


速攻呼び方を正された。
まぁ同じ家に住むのだから、こうしたほうが自然なんだろうけれど。
それでも、名前しか知らない彼に少しだけ近づけた気がする。


「私も貴様を名前と呼ぶ。文句は無いな。」
「な、ないです。」
「それとその気持ち悪い敬語もやめろ。同い年だろう。」
「えっすいません。」
「言った傍から!」
「ご、ごめん。」


まさかこんなにも怒られるとは思わなかった。もしかして、彼も私と仲良くなりたいと思ってくれているのだろうか。
視線からはそんな素振りは全く見えないけれど。

三成君はさっきまでと違い、わたしをじーっと見つめている。
なんというか、三成君―――というか此処の家の人はみんな顔が整っているからこんなにもじっと見られていると、ちょっとドキドキする。
いや、変な意味ではなくて。断じて。


「…。」
「……。」



沈黙が続く。
そりゃそうだ。三成君は何も話さなくなってしまったし、私も話題がない。
けれどやっぱり半兵衛さんのためにも、仲良くなったほうがいいんだろう。
同い年の同居人と仲が悪いなんて損すぎる。
私はこれからの豊臣家生活の為、必死に話題を探した。
ありきたりなものでいい、誰にでも通じる話題を。

「えっと、あの…」
「なんだ」
「(聞きづらい!)す、好きな食べ物…は?」


とりあえず考えて考えて、出てきた質問がこれだよ!
我ながら間抜けだとは思ったが、これはいいとおもう。
老若男女通用する一般的な質問だ。
好きな食べ物なら、誰にだってあるはずだ。
食欲は消せない欲だし。


「食事はあまり摂らない主義だ。」
「えっ食べないの!?」
「文句あるか」
「いやあるわけではないけど…。」


どうやら食は万人に通用する話題ではなかったらしい。
確かに骨が浮き出そうなくらいに細いけれど、まさか好きな食べ物がないくらいに食べないとは。
なんだっけ。拒食症、ってやつだろうか。


「なんで?」
「貴様が考えているような病気ではない。単純に不要なだけだ。」
「不要て…っていうかなんで考えてること分かったの…」
「顔に書いてある。」
「うそっ」


私は咄嗟にわっ、と顔を覆った。
そんなの有る訳無いというのに。
それにしても、私はそんなにわかりやすいんだろうか。
今までそんなことを言われたこともなかったから、ただ単に三成君の洞察力がいいだけ?
たしかに只者じゃなさそうだけど。
とにかく、食の話題だ。

「じゃ、じゃあ好きな食べ物ないんだ…」
「…餅や饅頭は好きだ。」
「ま、饅頭?!そ、そうなんだ…。」

意外だ、甘いものがすきなんだろうか。
肉が好きそうには確かに見えないけれど、和菓子っていうのもなかなか珍しい。
やっぱり人は見かけによらない。

「別に甘いものがすきというわけではない。」
「あっ、そうなんだ」
「…嫌いでもないが」


どっちだよ












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