22



元親先輩と毛利先輩と夕食を共にした次の日だった。


「名前、今日は暇か」
「え、うん暇だけど…。」
「昨日刑部に会いたいと言っていただろう。付いて来い。拒否は認めない。」
「は、はい…?」


と、私の意志も聞かずにつれて来られた大きな日本屋敷。
大きな、といってもサイズははるかに豊臣家のほうが上だった。(秀吉さんのサイズに合わせて造られてるし)
一般家庭からすれば、立派にも程があるような家。
三成君は門の端に取り付けられているやけに庶民染みたインターホンを押して門を開けるように言った。

「刑部、私だ。」
「あいわかった。ちと待ちやれ」

ギィ、と音を立てて開く門。
もしかしてこれ自動なんだろうかと思ったが、そうではなかったらしい。
開いた門の先には車椅子にのったミイラ…否、男の人が居た。
ミイラと勘違いするくらいに包帯まみれだったのだ、仕方ないかもしれない。


「久しいな、三成。顔色がよくなったか?」
「貴様は余計に顔色が悪くなっているではないか刑部!」


刑部、と呼ばれるその男性が大谷さんだということは一目でわかった。
何故なら、三成君の目が違ったからだ。
口調こそかわらぬ強さでも、友達を見る目だった。


「して、その娘は誰だ。」

大谷さんの目が私に向いた。

「えっと、豊臣さんちにお世話になってる苗字名前です。」
「…半兵衛様が言っていた娘か…。」

思い出したように顎に手をあてている。
どうやら、大谷さんも半兵衛さんの知り合いらしい。

「ところで三成、いつまでそこに突っ立っておる。名前も、はいりやれ。」

くいくい、と不思議な力に惹かれるように私達は屋敷の中へはいっていった。
私達が門をくぐった途端、ちょうどいいタイミングでバタリと門が閉まる。

…やっぱり自動なんじゃなかろうか。


「ヒヒッ、不思議よな。我の超能力よ」
「え!?」
「真に受けるな名前」

大谷さんは超能力者なのか、と信じたところで三成君に否定された。
大谷さんは口調と見た目の割におちゃめな人なのかもしれない。


一つの和室に案内され、座るように促される。
大谷さんがくい、と指を曲げると急須と湯飲みが浮いた。


「!?」
「やれ、そう驚くな。」
「名前あまり気にするな。じきに慣れる。」

2人は当然のような顔をしているが、私からしたらただのマジック、もしくは超能力者だ。急須の上に手をサッサとかざしてみたが、糸らしきものは付いていなかった。
どういうことなんだろう。
浮くだけならまだしも、勝手に湯飲みにお茶を入れだすものだから超能力だと思わざるを得ない。

「そんな単純なものではない、これはのろいぞ」
「のろい…!?」
「我は呪われておる故、その代償の能力よ」

の、のろい…!?
なんだそれ、ミイラ男になる呪いだろうか。
にわかに信じがたいけれど、大谷さんがいうと割と信じてしまえそうでこわい。
なにせ、ここに入ってきたときも不思議な力のような何かを感じたのだし。

「刑部!あまり名前をからかうな!」
「三成。そんなに怒りなさんな。心配せずとも盗ったりはせぬ」

ヒッヒッヒと異質な笑い声を大谷さんはあげる。
三成君は、何故か顔を真っ赤にしていた。

「名前、そなたは幸せよな。幸せすぎて憎いわ」
「刑部!」
「ちょ、三成君なんでそんな怒ってるの」
「三成よ、そんなにも声を荒げるな。」
「…悪かった」

三成君が秀吉さんと半兵衛さん以外の相手に謝った…!?
それに、一見、三成君は怒ってるように見えるけれど、でも…なんていうか…。
怒っているというか照れてるというか…
こんな三成君初めて見た。


「三成君、大谷さんと居るとなんかいつもと違うね」
「そ、そんなことは」
「三成は人見知りするゆえ、友がおらんのだ」
「放っておけ!」
「えっでも私も友達だよ三成君!」
「き、貴様は…」
「ヒッヒッヒッヒッヒ、名前、そう追い詰めてやるな」
「え!?」

私三成君追い詰めてますか…。

「わ、私は貴様を…友達と…」

もしかして私、友達と思われてないとか?ち、違うよね…?!

「えっと、三成君、ごめん…馴れ馴れしかったかな私」
「やれ三成。素直にならぬからこんなことに」
「違う!!私は別にそんな風には思っていない!それを言うなら貴様がッ…!」
「私がどうし…」
「名前、心配せずともこやつはこんな男ゆえ、キニスルナ。三成も素直になりやれ」
「…わ、私はッ!」

大谷さんはまた、ヒッヒッヒと笑い出した。
やっぱりこんな三成君は初めてだなぁ。


「三成君楽しそうだね」
「笑われておるぞ三成」
「知らん!!!」










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