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そんなわけで漸く帰宅。
そういえば此処は秀吉さんの家だけれど人を勝手に上げてもいいのだろうか?と思ったが三成君がそれを察したかの様に「基本的に秀吉様がいない時はプライベートルームへ入れなければ許可は不要だ」と教えてくれた。
とりあえず一安心した後着替えて料理を始めた。
ちなみに三人には待っている間テレビを見ていただくことにした。
最も、テレビを見ているのは元親先輩だけで毛利先輩は読書、三成君は提出物を消化しているようだが。






数刻後、カレーと軽いサラダの完成。
量はどのくらいいるかわからないし、元親先輩なんか沢山食べると思ったので、おかわりはセルフサービスということにしておいた。
一応量は一般的な量にしてみたが、毛利先輩は食べられるんだろうか。
三成君みたいに細いから、あまり食べられないかもしれない。
食べられなかったら…まぁ元親先輩になんとかしていただこう。


「いただきます」


もぐもぐ、と大して久しぶりではないカレーを胃の中へ押し込んでいく。
今回はりんごも使って甘めにしてみたけれど、成功していたようだ。
三成君と毛利先輩は無表情、元親先輩はうめえ、とちょくちょく言いながらガツガツと食べ進めていく。
うーん、対照的だなあ。

…そういえば、毛利先輩はどうしてあんなところにいたんだろう。
元親先輩に『捕まっていた』という感じだったから、進んで此処にきたわけではないんだろうけど…。
ならばどこかで会って無理矢理つれてきた…みたいな?


「そういえば毛利先輩ってどうして元親先輩に捕まってたんですか?」
「…大谷の家へ向かった帰りにこやつに不覚にも会ってしまったのだ」

眉間に皺を寄せて心底嫌という顔で元親先輩を指差した。
元親先輩はさほど気にせず「いいじゃねぇか」とか言っている。
三成君は―――大谷という名前を聞いてぴくりと顔を上げた。


「あの、大谷さんて誰ですか」
「我のトモダチよ」
「私の友だ。」


2人重ねての回答。どうやらお友達らしい。
にしても、三成君が自分から友達っていうなんて珍しいなあ。
家康君も友達みたいな感じだったけど、どっちかというと家康君が無理矢理「ワシの友達だ!」って感じで本人は嫌がってた様に見えたし…。
自分から友達っていうくらいだから仲いいんだろうけど、学校で見たこと無いなあ。会いに行ってるのも見たことがないし。
もし元親先輩に会いに行く途中に会ってるのだとしても、そんなに仲がいいのならその彼に会いにいくと言うとおもうんだけど。


「無駄な詮索をしているようだが、大谷は病で床に伏せていて学校には来ない。」
「えっ」

毛利先輩、エスパーか。

「石田と一緒に居ればいずれ嫌でも会うことになるだろうな」

大谷さん、かぁ…。
もしかして、いつぞやに言っていた病気の三成君の友達って大谷さん…?
なにはともあれ、三成さんがそんなに仲良しだという数少ない友達なんだ、一度は会ってみたいなぁ…。






カレーを食べ終えて、暫らく雑談していたら、気が付いたら時計の短針は9を指していた。
そろそろ帰るか!と元親先輩がソファから体を起こしたのを合図に2人は帰り支度を始める。
あまり長い間はなせなかったけれど、色々収穫はあったとおもう。
大谷さんのこと、とか。


「邪魔したな」
「カレー美味かったぜ!またなんかあったら、食わせてくれよ」


わっしわっし、と元親先輩の大きな手がまた私の頭を掻き乱す様に撫でた。
隣で三成君は次などない!と噛み付くように言っている。別に量とかお金の心配なんて
、しなくってもいいんだけどなあ。

「苗字」
「は、はい」

毛利先輩にあの切れ長な目でじっと見つめられる。
三成君ほどでは無いけれど鋭い目つきの所為で、普通に見ているだけでも睨まれているような気分だ。

「いや、名前。そなたには料理のセンスがある」
「えっ…そ、そうですか…?」
「そうだ。また…今度はチク…長曾我部を切り捨てた上で夕餉を食べにきても構わぬか?」
「あ、はいどうぞ!!」


長曾我部を切り捨てる、という言葉を聴いて元親先輩は「俺もいくぜ!」とか言っている。

「それではな」
「はい!さようなら!」

こうして、元親先輩と毛利先輩は豊臣家から去っていった。









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2人を見送って、リビングへ戻ると先に戻っていた三成君と目があった。


「…貴様はたのまれれば誰にでも飯を提供するのか」
「え」
「答えろ!」

何があったのか、三成君はいつもにまして目をつりあがらせ怒っていた。
2人にご馳走したことに対して怒っているのだろうか。

「ま、まぁ時間と材料があれば…」
「そんなに生易しい態度でいれば相手はいずれ付け上がる!次からは金もしくは首をとれ」

首…。三成君が言うとジョークにならないんですけど…。
いや、ジョークどころか本当にやりかねないからこわい。

「く…えっああ冗談だよね…」
「好きに解釈しろ」
「いやまぁ料理好きだしそんなお金取るほどでも」
「…趣味で料理がしたいなら私に言え。材料も買い揃えた上で完成したものも食ってやる。だから私の許可なしに他のものに貴様の腕を振るうな。」

…何を怒っているのかと思えば、もしかして…。

「…それって遠まわしに私の料理ならなんでも好きだから食べるって意味だったりします?」
「そうだ」


ストレートだなおい!!!






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