20 スーパーを出て帰路を急ぐ。 特別急ぐことがあるわけではないけれど、なんとなく早足で帰った。 家にあったエコバックいっぱいの食料は、三成君が半ば無理矢理持ち去った。 ちなみに、さっき知ったのだが三成君はカレー好きだが、辛口より甘口のほうが好きらしい。 「三成君そんなにカレー好きなの?」 「特別好きという訳ではない。」 「けどこの間も食べたじゃん」 「メニューが半年一緒だろうと私は構わん」 食に無頓着だとは言っていたが、まさかここまでだったとは。 けれどさすがに半年一緒って言うのはどうかとおもう。 もしかしたら、秀吉さんと半兵衛さんの超長期出張のときは半年近くメニューが一緒だったんじゃなかろうか…。 そりゃあ半兵衛さんも心配になって私を居候させるってものだ。 と、雑談を交わしながら家の前の一本道まで差し掛かると、見覚えのある銀髪と紫色が目に入った。 銀髪紫色の知り合いは三人いるが、1人は隣に、もう1人は出張だ。 となれば残りの1人…。 「元親先輩!」 「三成!名前!何処いってたんだよ遅せェじゃねーか」 予想的中、というか目立つ見た目だから当たり前なのかもしれないが、長曾我部元親先輩だった。 肩に羽織った紫色のジャージは前に学校で見たときと全く同じだ。 そして、その隣にはシャツの襟首をぐわっと掴まれている緑色の先輩(と思われし方)がいた。 初対面のはずだが…どこかで見たような。 「…毛利元就か」 「三成君知ってるの?」 「ん?ああ名前は知らなかったなァそーいや。説明してやるぜ」 「いらん!そんなことをする暇があれば我を解放せよ!!!」 毛利先輩、というらしい。 彼は必死に元親先輩から逃れようとじたばたと体を動かし、元親先輩の体を綺麗に磨かれたローファーで蹴っていた。 いてェッとか言っているが、本人にいうほどダメージはなさそうだ。なにより体格差がありすぎる。 …ところでどうしてこんなところにいるんだろう。 口ぶり的に、私達を待っていたような。偶然にしちゃナイスタイミングすぎるし。 三成君に用事があったんだろうか。 「あの、何か用があったんじゃ…」 「あぁそうだ忘れるトコだったぜ!三成!前の約束…忘れちゃいねぇよな?」 「…前の約束?」 前の約束?なにか三成君と元親先輩は約束をしたんだろうか。 「!!まさか本気だったのか!」 「本気も何も…最初っから本気だったぜ?」 「…知らん。伝えていない。帰れ。」 「なっ…まじかよ!?」 「なれば早うに我を放せ長曾我部!!!」 全く話が読めない。主語が無い。 出来れば私にもわかるように話していただきたいです銀に紫のお二人さん。 「それにこの娘も呆けておるではないか。言葉も頭も足りぬ愚かな鬼め。女1人待たせるとは愚の骨頂だな」 毛利先輩、助け舟はありがたいですが言いすぎじゃないですか。 「っと…悪ィ、三成と約束してたんだよ。いつか名前のメシを食わせろ、ってな」 「…え?」 いけない、相手は先輩だっていうのに素で返してしまった。 つまりなんだ?三成君と元親先輩は私の料理を食べさせるっていう約束をしていて、三成君はそれを本気だととっていなかった。 そして、三成君は私にその約束についてを伝えていなかった。 元親先輩は本気だったので割と普通に食べに来た…と。 ようやく事態を理解することができた。 別に私の料理なんて、言ってくれれば材料と時間さえあればいくらでも作るんだけど…。 せっかく今日来てもらったのに帰ってもらうのは悪いし、何より今日はカレーだから人数が少々増えても大丈夫だろう。 「あの、じゃあ食べます…?」 「まじか!?」 「名前!」 「…。」 元親先輩の驚きの食いつき。そんなに私の料理を気に入ってくれたのか。 「今日カレーなんで簡単ですけど量増えても問題ないですし…よかったら毛利先輩も」 「仕方ない。誘いを断わる程多忙でもないからな。受けてやる。」 「素直になれよ毛利ィ」 「黙れ死ね」 「…あの、中はいりません?」 とりあえず、今日の食卓はにぎやかになりそうだ。 --- ←→ 表紙へもどる |