09



次の日、私はいつもよりも早く起きてお弁当と朝ごはんを作り始めた。
いつも7時起きだったから、6時起きは少々辛かったがなんだかやけに爽やかな気分だ。
食べるかは分からないけど、一応食べたほうがいいと思って三成君の朝ごはんも用意した。
三成君の口に合うだろうか、まずいとか言われてお茶碗とか割られたらどうしよう。
そんなことを考えていると既に制服に着替えた三成君がやってきた。
ご飯食べてくれるかな、食べてくれないとコレ無駄になっちゃうんだけど。
そんな意味をこめてじっと三成君を見つめていると、一瞬目が合った後ぷい、とそっぽをむいて座り、ご飯を食べ始めた。

「そんな顔をしなくても用意されたものは食べてやる。」
「あ、ありがとう…」

またそんなに顔に出ていたらしい。
お弁当を包み終えて、私も三成君の向かいに座って朝ごはんを食べる。
夕食もあまり食べないから量は一応私より少し少なめにしたが、ちょうどよかったらしい。
私が味噌汁を飲んでいると三成君は食べ終えたらしくご馳走様と言って食器を流し台に置いてこっちを一度見やり、

「うまかった」

と、一言呟いて顔をそらした。

「あ、ありがとう。えっとその青い包みのほうが三成君のお弁当…」
「分かっている。」

中学校から使っていたらしい包みだし、説明はいらなかったかもしれないが言うことがなくて気まずかったので、一応言っておいた。
よかった、まずくなかったみたいで。
社交辞令だったのかもしれないけれど三成君はまずいものを食べておいしいというタイプではないし。

時計を見るとそろそろ家を出る時間だったので、私も朝食を片付けて家を出た。












高校の実質的な授業一日目とは早いもので、勉強の話より説明や先生の自己紹介のほうがほうが多かった。
気が付けばお昼休み、
三成君はというとまたどこかへフラっと消え、家康君も男子と話しているので、どうしようかと目を泳がせていると、一緒にいいですか?と鶴姫ちゃんが声をかけてくれた。
明日からもお昼ご飯は鶴姫ちゃんと食べることになりそうだ。


「名前ちゃん、お弁当は誰が作っているんですか?」
「えっと…今日は私。」
「本当ですか?!すごく綺麗でおいしそうです…!!」


私のお弁当箱を見て鶴姫ちゃんはキラキラと目を輝かせた。
其処まで見事な料理ではないのだけれど、こうやって褒めてもらえるのはやっぱり嬉しい。

「あの、一ついる?」
「いいんですか?!じゃあこの卵焼きもらってもいいですか?」
「うん、いいよ」
「じゃあ私のも一つどうぞ!」


鶴姫ちゃんのお弁当は色々な具材が色鮮やかに並べられている女の子らしいものだった。
どれもこれもおいしそうで悩んだので、とりあえず無難に卵焼きを貰っておいた。


「えへへ、交換ですね!」
「うんそうだねー!」


鶴姫ちゃんからもらった卵焼きはほのかに甘くってとてもおいしかった。
そういえば、半兵衛さんの作ってくれた卵焼きも甘かったなぁ。
私は甘い卵焼きを作れないから、こういうのうらやましい。


「名前ちゃんの卵焼きとってもおいしいです!」
「鶴姫ちゃんのも甘くておいしいー!いいなぁ、甘い卵焼き作れるの」
「いえいえ!名前ちゃんの卵焼きはすごく味が深くていいとおもいます☆私、この卵焼きすごく好きですっ!」


此処までべた褒めされるとたとえお世辞だとしても(といっても鶴姫ちゃんが言うと何でもオーバーだから本心に聞こえてしまう)照れるというものだ。
そうしてキャッキャはなしていると、家康君が私の後ろからにゅっと顔を出してきた。

「ん、美味そうな卵焼きだな!」
「とってもおいしいんですよ!」
「えっと…よかったら食べる?」
「いいのか?じゃあ…」

家康君はあーん、と口を大きくあけた。
これは食べさせろと、そういう意味か。そういう意味なのか。
とりあえずお箸で卵焼きを掴み、家康君の口元へ持っていく。
家康君はぱくり、と卵焼きを食べると物凄いキラキラな笑顔で美味い!と一言言った。
今までこうやって自分の料理を人に食べさせることもなかったから、こんなにおいしいおいしいといってもらえるのは初めてで、なんだかむず痒かった。





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