隼人が大学のサークルの合宿に行くにあたって言われたのは、「さみしいだろうから、オレの部屋には勝手に出入りしてもいいよ」ということだった。
ウインクをきめながら言うものだからその時は恥ずかしさやらなんやらで「そんなことするわけないじゃん」と言ったけれど、隼人がここを出て6日が立った今、私がいるのは隼人のアパートのベッドの上だ。

我ながらバカバカしいとは思う。今までそういうことを誘うのは隼人からで、自分から「したいな」と言ったことも思ったこともなかった。
なのに、6日離れただけでこれだ。最初は余裕だと思っていた。ふとしたときに隣にいない隼人にさみしさを感じながらも、一週間の辛抱なんだからと堪えていた。
だけど、3日目の夜からはもうダメだ。
隼人の匂いが恋しくなって、うちに置いてある隼人の服を抱きしめて眠った。
次の日はさみしさを紛らわす為に友達と朝から晩まで出掛けたけれど、チョコバナナクレープを見かけた時とか、ペットショップでうさぎを見かけた時にどうしても隼人を思い出してしまって逆効果だった。
5日目についに隼人のアパートの鍵を手に電車に乗った。遠慮なく鍵を開けると、主のいない部屋は静かに私を迎える。
部屋の中全部が隼人のにおいで包まれていて、どうしようもなく隼人が恋しくなった。すぐに帰ろうと思っていたのに、結局隼人の服を勝手に拝借してそこで寝た。
そして今日、私はつきにヘンタイ行為に手を出した。
隼人のTシャツ一枚だけを身に付け、自分を慰める。
隼人がしてくれるのには程遠いけれど、わずかな快楽が私の喉を、肩を震わせた。
自然に腰が揺れて隼人のシーツにシワを作り、汗がじっとりとTシャツを濡らす。
無意識に激しくなる指が立てる水音が大きさを増し、アパートに響き渡るようだった。
隣には人が住んでいるからと声を堪え、噛んだ指にはくっきりと自分の歯の痕がついている。
いつもなら「痕がついちまうから」と隼人が自分の親指を噛ませるのに。それを思い出して、じくりと奥が疼いた。

「隼人、はやとぉっ……!」

安価なパイプベッドが床と擦れるんじゃないかというくらい、激しく揺れていた。
ほとんど堪え切れていない喘ぎ声と水音のせいで、耳まで変になってしまっている。
腰が浮いて、頂上に近づく感覚に身を震わせる。言葉にならない声で何度も何度も隼人の名前を呼んで、もう少し、という時だった。

ガチャリ、と、鍵の開く音がする。

そこをこすり続けていたべたべたの手が止まり、ぴくぴくとそこが震えている。
靴を脱いでぺたぺたと歩いてきた隼人がリビング兼寝室、私がいま、一人で致している場所までやってくる。
隼人のTシャツが胸の上まで捲れ上がって、それ以外は全裸だ。
ヘンタイ、ヘンタイだ、これ。どうしよう。
ここでどうにかごまかせばいいのに、下半身に当てていた指をぎゅっともう片方の手で握り、ベッドに起き上がることしかできなかった。バッチリと隼人と目があい、一度は驚いたように目を見開いたが、それはすぐに妖艶な笑みに変わる。

「ただいま」
「あ……………お、おかえり」

大きなカバンを床に置いて、姿勢を正しTシャツを伸ばした私の座るベッドへやってくる。隼人がそこに腰を下ろし、距離を取ろうとすると腕を掴まれ逆に隼人の方へ抱き寄せられた。
隼人の汗の匂いが微かにする黒いTシャツが目の前にあり、隼人の表情は伺えない。

「なまえ」
「ひゃ、」

隼人の大きな手がTシャツの中に入り込み、背中に指を滑らせた。
欲情した肌は熱く、隼人の指が冷たく感じる。撫でるだけの愛撫に目をつむり隼人の胸に頭を押し付けていると、それが倒れてきて、隼人がベッドにうつ伏せになった。つまり、押し倒されている状態で。
背中はまだ隼人に撫でられていて、腰を引けばその隙に太ももの間に隼人の足が滑り込む。無理矢理足を開かされ、ベッドで大の字のような体制で隼人に見下ろされていた。

「ナニやってたんだ?」

その視線にぞくりと鳥肌が立った。
決してそらすことを許さないような眼差しが私一人に注がれている。答えないまま口を噤んでいると、隼人の手がふとももをゆっくりと伝い、何にも包まれていない付け根へと至った。

「すげえ濡れてるな、一人でやってたのか」
「ちっ、ちが……」
「何が違うんだ」

中指一本が掬うように筋を撫で上げると、そこはもう私の体液がねとりと付着しててらてらと光っている。
見せ付けるように目の前に指を持ってこられて、羞恥にぎゅっと目を瞑り顔を背ける。唇をその指でなぞられ、薄く瞳と唇が開く。ぺろりと舐めた自分の味が舌に染み、また下半身を潤した。

「オレのは飲めるのになぁ」
「アレは隼人が飲めっていうから…!」
「じゃあオレがこれも舐めろっつったら、おめさん舐めるのか?」

返事につまり、ぐっと隼人を睨み上げた。濡れたその指先を舐めるか舐めないかで言われると、隼人に言われてしまうとやっぱり舐めてしまうのだと思う。
だけどそれを言葉にして返事することはどうしても私の自尊心やらなんやらが許さず、押し黙るだけだった。
ふっと表情を柔らかくした隼人が「冗談だよ」とその指を厚い舌で舐める。自分の指なのに、私のアレがついてるのに、まるで美味しい棒アイスでも舐めているかのように丹念に舐める様子は目に毒だ。

「そうだよな、こうやって遊んでる暇あったら、とっとと入れてほしいよな」
「えっ!?」

最後に指の甲をちゅっと吸って隼人は自らの指から唇を離すと、突然投げ出されゆるく開いた私の足を掴みあげる。突然のことに驚いて体勢を整えようとしたがそれもかなわず、半分角度をつけて起こしていた上体が完全にベッドに押し付けられた。
隼人の肩に片足を乗せられ、大きく足が開かせられる。両足ともあげていないせいで、余計に足が開いて、きっとそこは隼人からは全部見えてしまっているのだろう。厭らしく涎を垂らしたそこに数度指を抜き差しされ、溢れた液がシーツを汚す。
隼人は自分の尻ポケットに入っている財布を開くと慣れた手つきで袋を破り、ゴムを自分に装着させた。その手際といえばもう、賞賛に値するくらいには鮮やかで。褒められたことでは決してないけれど。

「ほら、入れるぞ」
「ま、まって、隼人のは…」
「お前の見てたら勃ったから大丈夫だよ」

大丈夫ってなんだよ、と聞く間もなくそれが中に押し入ってくる。いつもは舐めさせたり手で擦らせたりするくせに、こういうときにはすぐに使い物になるらしい。
六日ぶり、いや、合宿前はしていないからもう一週間ぶりだろうか。久々の隼人の形を私の中が確かめるように締め付ける。
片足を下ろしているせいで身体を斜めにしながらシーツを握り、隼人はゆっくりと腰を動かした。
その動きが物足りなくなって自分で腰を動かすと、隼人がにやりと口元を緩ませさらに動きを激しくする。
絶頂が近づくと隼人は身体を倒してより奥に押し込み、私の身体を抱きこんで、ゴム越しに中に吐精した。

「っはぁ……は、はやと…」
「………」

普段よりも早い。普段はもっと、執拗に色んな場所を突いてきたりとか、言葉攻めで恥ずかしいことを言ったりしてくるのに。
萎えてもまだ中から抜かれないそれをどうするのかと視線を投げると、ぎらりとした目が私の肌を睨んだ。乱れたTシャツを素早く上に上げられ、裾を口元に持ってこられる。

「咥えてろ」
「え?」
「もう一回、しような」

無理矢理裾を噛まされたせいでめくれあがった胸元に、隼人が顔を埋めた。あれ、なんか隼人さん、おおきくなってないですか。

「六日も禁欲してさ、予定より早く帰ってこれたからなまえに会う前に抜こうと思ってたらこれだぜ。勘弁してくれよ」
「か、かんべん……?」
「ムラムラしないわけないだろ、彼女がオレのベッドでオレのTシャツ一枚で部屋でオナニーしてるんだからな」
「……っ!」
「なぁ、なまえも溜まってるんだろ?相手してくれよ。オレ、あと5回は余裕でイけるぜ」

下ろされたままだった足も肩にかけられて、一度抜かれたそれをすぐに新しいベッドサイドの箱から取り出されたゴム付け替えると、何の予告もなしにまた隼人のが入ってくる。
全然元気そうだ、合宿帰りのはずなのに。あと5回?冗談じゃない!

(自転車部の体力に付き合えるわけがないでしょう!)



140409
ネタ提供:花菱ちゃん



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