黒田雪成


「…これ」
「ん?ああ」

今日友達が来てさ、今度結婚するらしいよ。そう言うと、ユキは納得したように頷いて見せた。
ユキの手にあるのは結婚雑誌だ。今月は披露宴特集で、最近はいろんな披露宴があるんだな、とぺらりとページを捲る。
白い衣装に身を包んだ男女の幸せそうな笑顔、ウェディングケーキ、シャンデリア。幸せを形にしたような写真に、自然と口元が緩む。

「へー、ドレスの色あてとかあるんだ」
「色あて?」
「次お色直しして来た時、新婦が何色のドレスを着てるかあてるんだって」
「ふーん」

ユキがもう一ページを捲ったところで、披露宴特集は終わった。
雑誌を閉じてローテーブルに投げ、二人ともソファに沈む。
テレビをつけようかとリモコンに手を伸ばした時、唐突に懐かしい呼び名が聞こえた。

「なまえさん」
「…なんかそれ、高校の頃みたい」

今でこそお互いタメ口だけれど、高校生のときは先輩後輩だったから敬語だったっけ。
なつかしい。笑っているとリモコンに伸ばしかけた右手を取られた。

「なまえさん、オレ、なまえさんのこと好きです」
「ふふ、私もユキのこと好き」
「ずっと愛し続ける自信、あります」
「私もあるけど?」

なんだこれ、バカップルみたいだ。
私の右手とユキの左手が絡まり、手の甲が指でなぞられる。
こんな真剣な顔、久々に見たなあ。
大きな黒目は私の顔を映し、今にも吸い込まれそうだ。

「……お、オレのために毎朝味噌汁を作ってください」
「今も作ってるじゃん」
「っそうじゃなくて!」
「あはは、わかってるって」

ありがとう、珍しく私から口付けて、離れたそこには驚いた顔がある。

「愛してるよ、ユキ」
「っ、オレの方が!」




長く付き合ってる彼氏の部屋にそれとなくゼクシィ置くと結婚したいアピールになるらしい
140226

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