荒北靖友


最近コイツテレビ出過ぎじゃナァイ?と靖友が指差した先を見ると、今流行りのアイドルグループでセンターを務める女の子が仔犬を見てはしゃいでいる。
確かにその子は最近どのチャンネルをつけても出ている、ような、気のせいなような。
テレビ業界にもいろいろあんのよ、多分。この子だってきっと出たくて出てるわけじゃ…と言ったところで、女の子ははにかみ笑顔で「お仕事だいすきです!」と言った。らしいわ、靖友くん。
酒が入っているからか、えらく無邪気に笑う。
つっついても怒鳴り散らしてこないあたり、お酒の偉大さを感じた。
なんかとってこようかな、戸棚にするめがあったような。おっさんチョイスは気にしないで欲しい。
するめと柿ピーを持ってテレビの前に戻ると、靖友がケラケラ笑っている。
なーんかテンション高いなこいつ、柿ピーを渡すと、するめがいいと文句を言われたが、するめは私のだ。
ぴりりと袋を破る。靖友は三日月を口に投げ込んだ。

「なぁ」
「なにー」

テレビで女の子がぶりっ子ポーズ、私がこんなのやっても靖友爆笑するだけなんだろうなー。
するめを咥えながらそう思うあたり、もはやダメだ。

「結婚するか」
「うんそうね」
「…」
「…え?」

にやにや、という擬音がよく似合う。
こいつ、いまなんて?

「なまえチャン、オレと結婚してェ」
「酔っ払いはもう寝てくださーい」
「なまえチャンが結婚してくれんなら寝る」
「はいはい結婚するよ旦那さま」

翌日机に置かれていたのは、いつもらってきたのか、片方に記入と印の済まされた婚姻届だった。




荒北は酔うとデレそう
140226

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