オレには好きな女の子がいる。
同じクラスの控えめな子で、少し地味に見えるが姿勢もよく言葉も丁寧な、今時珍しいタイプの子だ。
足を広げたりもしないし、スカート丈は膝上なものの短いわけじゃない。
姉が真逆だから、そういうお淑やかな子に惹かれたのかもしれない。
そんな彼女を見て癒されることが日課の一つになっていた。
…気持ち悪いとか言うんじゃないぞ。
ちなみに話したことはあまりない。
向こうから話しかけてくることはまずなく、オレのようなタイプとはあまり合わないのか、友人も大人しい子ばかりなので話しかけるのを躊躇してしまう。
何かの機会に少しでも親しくなれればと様子を伺っているのだがそれはなかなか訪れそうにない。
憧れでとどめておくにはもったいない思い。
こんなはっきりとした恋心を抱いたのは初めてだった。

誰かに相談しようと思ったが、身の回りの男の中ではオレが一番女子には詳しい。
新開あたりはどうかと思ったが、下手に話してアイツにとられたりなんかしたら、と嫌な考えが頭を過ったのでやめた。
前に話していた、新開の好みのタイプドンピシャだったからだ。
フクや荒北はそういうの向いてなさそうだし、巻ちゃんには…オレが少しヘタレているところを見せたくない。
ライバルの前ではかっこよくいたいんだ。男ならそう思う。
それに、できたら女子がいい。
ああいう子には男子の経験則より、女子の身近な意見が有用だと思ったからだ。
女友達はたくさんいるけれど、やっぱりオレはここでもかっこつけたがりだった。
いっそ、全く知らない人がいい。
そのくらいの方がきっと話しやすいし、客観的に話してもらえる。
そうして頼ったのは、メル友交換の掲示板だった。
迂闊だとは思ったが、物は試しだ。もし変なヤツがくれば、お断りしてメールアドレスを変えればいい。
気軽な気持ちで、『同い年の人と学校の話なんかをしたいです』と他に比べると丁寧な文で自己紹介が書かれたメールアドレスを選んだ。
なんとなく、雰囲気がななやまさんに似ていたから。この子もきっと彼女に似た大人しい子なのだろう。
メールを送ってみる。
『初めまして、掲示板を見てメールしました。実は、恋愛相談に乗ってもらいたいのです。友人より距離の遠い人の方が話しやすいので。よかったらメル友になりませんか?』
丁寧な子に送るのだから、丁寧な文を心掛けた。
さて、返信はくるだろうか。






気まぐれだった。
なんとなく、暇を持て余していた。
三年生になってしばらくが経ち、最上級生として余裕が出てきた。
勉強もしなければいけない。けど、何か張り合いが欲しい。
そう思って書き込んだのが、メル友募集の掲示板だった。
直接アドレスを貼るのは危険だと思ったのでフリーアドレスを取得して、それを載せた。
メル友になりましょう、と何通か声がかかったが、期待していた同級生からのメールはなく、しかも大人の男性ばかり。
こういう掲示板で女子高生という肩書きは少し邪魔だ。
同期の人と学校の友達とはできないような話がしたかったのに。少し期待外れだと思っていた。
あまりにそれ関係のメールしかこなかったので、もう書き込みを削除しようかなあと思った矢先にそのメールは来た。
件名からして、全然違った。
初めましてと丁寧に書かれたそれは、同級生の男子を名乗る人からのメール。
恋愛相談がしたい。丁寧な文から、真面目な人なのだと窺い知れた。
少し奥手なのだろうか。きっと、友人とも恋愛の話をしないような人なんだろう。
文書を見てそう感じ、少しでもその人の力になれればと思った。
同級生の男の友達はあまりいないし、ついでにこれを機に男の子のことも教えてもらおう。
私はすぐに返信した。ケータイのアドレスを添えて。


140107






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