ぼんやりしたまどろみのなか、枕元のケータイに手を伸ばすとそれは何も映し出さなかった。
壊れたのかと一瞬焦ったが、昨日電源切ったんだとすぐに思い出して、電源ボタンを長押しする。
昨日八くんに電話番号を載せたメールを返信して、それ以来だ。
新着メールを受信すると、八くんからのメールが一件あった。

『体調が悪いなら仕方ない。無理をするなよ。また、大丈夫そうなときに教えてくれ。
今日はしっかり寝るんだぞ?
それと、これまた突然で申し訳ないんだが、今まで相談に乗ってくれていた彼女に告白することにした。
結果はどうなるかわからないけど、勿論報告する。
もしダメだったら慰めてくれ』

胸がズキンと痛んだ。
八くん、告白するんだ。
委員長と二人で歩く姿が頭に浮かんだ。やっぱり相手は委員長なのだろうか。
がんばってね、って送らなきゃいけないのに、上手くキーが操作できなかった。
一晩眠っても諦めはつかなかったらしい。ひとまずは準備することにして、制服に着替えた。

寝癖を直しながら、いつ告白するのだろうと考える。
こうして宣言したからには、近いうちだろう。
今日?明日?一週間後?
それまでこの気持ちは続くのだろうか。
私にとって一番いい結果とはなんなのだろう。
委員長に告白して、フられること?
それで、私が慰めて、八くんが私のことを好きになる日はくるのだろうか。
東堂くんはきっとメール越しの相手なんて好きにならない。
どうして東堂くんが委員長のことを好きになったのかはわからないけれど、委員長に振られたとしても周りにはたくさん魅力的な女の子がいて、選び放題だ。
一度振られても諦めないかもしれないし、諦めたとしても他の周りの女の子を好きになる。
これからずっと、私のことを見る日はこないんだろうな。
自然に姿勢も悪くなり、気がつくと俯いてしまう。
顔色が悪いと母に心配されながらも学校を休むことはどうしてもできなくて、とぼとぼと一人通学路を歩いた。
結局、メールの返事を打てたのは学校に着いてからだった。

『体調は大丈夫。心配かけてごめんなさい。
告白するんだ!東堂くんならきっとうまくいくよ
応援してるね。がんばって!
いい結果が聞けるといいな』

送信して、スカートのプリーツの間のポケットに仕舞う。
内容は半分本心で、半分嘘だ。
応援してるなんて、八くんが目の前にいたら言えるわけがない。
だけど思いを伝えることもできなくて、今はやっと返信が出来たとほっとしていた。
椅子に体重をかける。返事が来るのはいつだろう。
嘘と本音の入り混じる送信メールを頭の中で何度か反復して、気づいた。
サーっと、血の気が引いていく感覚。指先が冷たい。
送信済みBOXを開いて、先ほど送ったばかりのメールを見た。
何度も確認する。十回ほど読んで、やっと認めた。
間違いない。私、八くんのこと。


八くんのこと東堂くんって呼んでる。




140124






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