十八年生きてきて、告白現場に初めて立ち会った。
後輩だろうか、少し背の低い編みこみのかわいらしい女の子と、その前に立つのはマイフレンド隼人くん。
もじもじとしながら思いを告げるその様はまさに可憐。
私だったら即OKしてしまうような美少女だったけれど、隼人くんはお断りしていた。
「悪い。好きな子いるから、君とは付き合えないよ」
そう言い放った隼人くんの顔はよく見えない。
女の子は顔を覆って、泣き出してしまった。
なぜか私が罪悪感にかられた。盗み聞きに対する罪悪感だろうか。それとも。
程なくして女の子は走り去っていった。
なぜか私がほっと一息つく。
早く隼人くんもどっか行ってくれないかな、ここから出られないと思いながら様子を伺っていたら、まさかの声がかかった。
「…気づいてたの」
悪びれもなく笑う隼人くんは最初っから私の気配に気づいていたらしい。
ちょろっと顔を出して、隼人くんの笑顔を確認してから体を乗り出した。
「う、ごめん」
「わざわざ謝ることじゃないよ。それにわざとじゃないだろ?」
わざとではない。わざとではないんだけど。
さっきの女の子の泣き顔が思い浮かんだ。
あの子はあのあと友達に慰めてもらうのだろうか。
すごくかわいい子だったから、素敵な人と幸せになれるといいなと思う。
それからもう一点、気になるところが。
「隼人くん、好きな人いるの?」
「…直球だね」
好きな子がいるから付き合えないと、確かに新開くんはそう言っていた。
友達になって1ヶ月くらいだろうか。まだ日は浅い。
恋愛相談されるような間柄ではないものの、私と一緒に居て、隼人くんがすきそうな女の子というものに出会ったことがない。
逆ならたくさんあるんだけど。
「どう思う?」
「隼人くんが女の子気にしてるの見たことないから、居たんだって思ってびっくりした」
「…はは、なるほど」
はは、じゃなくて。
誰なんだと詰め寄るとにやっと笑って私をびしっと指差した。
「嘘だよ」
「え?」
「本当はいない。でも、面倒だから」
面倒って。名前も知らないあの子がかわいそうだと思ったけれど、モテるんだから仕方ない。
今は自転車が恋人なんだろうなあ。歩き出した隼人くんの後姿を見つめた。
数ヵ月後、私は彼のその言葉が嘘だと知る。
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