「あきらくん!あけましておめでとう!」
「…おめでとう」

なんもおめでたないわ。そんな顔をしてる。
家の前で偶然会った幼馴染に新年の挨拶をした。
新しい年が来たというのに、全く普段と変わらない。もっとしゃきっとしたらどうなんだ。背中を叩こうとするとにゅるんと軟体動物のような動きで避けられた。

「ユキちゃんたちは?」
「初詣行ってる」
「え、あきらくんは?一人でお留守番?」
「…おまえこそなにしとんねん」
「初詣いくの」
「一人で?」
「まあね」

お前も一人やろ、と言われてぐさっとささった。図星だ。
それでもくじけない。私が一人でママチャリを持って家を出たのには理由がある。

「じゃああきらくん、お互い一人どうし一緒に初詣でもどうかな」
「は、なんでそんなんせなあかんの。キモ」
「だって一人だったら私背低いし埋もれるんだもん。あきらくん高いから大丈夫でしょ」
「誰が好き好んで人混みの中いくねん」
「お願い!ね!いこ!ほら私これ後ろに乗るから」
「普通そこはお前が漕ぐんやろ」
「自転車競技部の脚力に期待」
「…キモ」

そういいながら私をどけさせてあきらくんはママチャリにまたがった。
荷台に乗る。ゆっくりと漕ぎ出す。
レース中みたいにイヤハアア!とかは言わない。自転車もハートのやつよりも大きいから、背筋も伸びている。
見慣れないなあ。ちょっと面白い。
警察官に見つからないように新年早々二人乗り。神様許してください。



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