「今日っていい夫婦の日らしいよ」
「へー」

あ、興味ないなこいつ。
いつもと同じように、部活終わりの僅かな空き時間に大我の家へやってきた。
大我のご飯を食べて、適当にダラダラして、10時くらいに帰る。
たまに大我はマジバとかで部活の人と食べてくるけど、その時は私も自分で食べてくる。そういうきまり。
一度カントクさんに「一緒にくればいいのに、歓迎するわよ」と言われたけれど、大我が猛反対したため部活の人と食事を共にしたことはない。
私的には一度くらいと思うのだけど。

話がずれた。
そんなわけで食後のまったりとした時間、大我はバスケ雑誌を読んでいて、私はケータイを触っていた。
バスケ雑誌を読んでるのは月の初めはいつものことなので気にしない。

「11でいい、22で夫婦なんだよ」
「いつも思うけど日本の語呂合わせって無理矢理すぎるだろ」
「そうかな」

私は嫌いじゃないけどね、とフローリングに転がった。
メールが来るわけでもなし、することないなと思ったけれど、大我の雑誌にも興味はない。
…あ、とひらめいて、私は体を起こした。
その後に大我から雑誌を上に取り上げる。
長身の大我から物を取り上げるなんて普段じゃできないようなことだけど、あぐらかいて座っている大我ならできなくもない。
すぐさま取り返そうと手を伸ばしてくるので、私は後ろに雑誌をやったあと、外に飛び出しマンションのドアに備え付けの郵便受けにいれた。

「なにやってんだよ…」
「とりにいきなよ」
「はっ?!おまっふざけ……はぁ」

めんどくせー、というオーラを出しながら、大我は立ち上がる。
のそのそと歩いていったのをみて、私はキッチンへ走った。
あまり使われないのになぜか用意してあるそれを手に取り、身につける。大我は私に気づいていない。
ドアを開けて外に出て、ガサガサと郵便受けの音がなる。
その隙に廊下へ走り、玄関の靴箱の前に立った。

再びドアが開く。
眉間にちょっとだけシワを寄せた大我にムカつくほどの笑顔で言ってやった。

「おかえりなさい貴方!ごはんにする?お風呂にする?それとも…わ、た、し?」

きゃぴ、といつもじゃあり得ないウインクまで添えて、新婚嫁を演じてやった。
エプロンを身につけて、右手にはおたま。完璧な装いだ。
どうだ?と大我の顔を覗き込むと、まさに「なにやってんだこいつ」みたいな顔をしていた。
…なにやってんだろう、私。

「…な、んてね。あはは」
「お前カントクになんか吹き込まれたのか?」
「は?カントクさんがなんで出てくんの」
「いや…なんでもねえ」

大我は何かを思い出したようにげんなりとした。カントクさんに何かあったのか?
首を傾げていると大我は半分くらい外にあった体を部屋の中へ入れてドアを締めた。

「メシも食ったし風呂は今沸かしてるだろ。…じゃあお前」

ちょっと目線をそらして、照れながら言う。
なんだ、まんざらでもないんじゃない。

「じゃあかがんでよ」
「…」

たまには私から、キスをお見舞いしてやった。



131123





「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -