日曜日に大我の家に行くときは、決まって大我の作った昼食を食べる。
日本に帰って来てから…というよりも、アメリカ時代から親が仕事で忙しいときは自分でご飯を作っていたらしい。
そのせいあってか、大我の作るご飯はめちゃくちゃ美味い。そして見た目も綺麗。
自分が食える程度、って言ってたけど、味付けも私の好みだった。

「今日のお昼はなにー?」
「たらこスパゲッティー」

一人キッチンに立つ大我をソファで寛ぎながら観察する。
手際は無駄にいい。無駄すぎるほどに。
普通は逆なんだろうけど、大我のほうが料理が上手いんだから仕方ない。
私も料理は出来なくもないけど、大我の言う自分が食える程度とは違い、本当の本当に自分が食える程度なのだ。
味はまぁ普通…だと思うけど、見た目はちょっと…。正直言うと、あまり食欲をそそられない。
ダラダラしていると、スパゲッティが完成したらしく、二人前を乗せたお盆を大我がローテーブルへ運んできた。
…二人前とは言うけれど、一般人のそれとは程遠い。
勿論私が食べる分のお皿は普通。問題は隣のお皿。
なんだこの麺の山は。これでよくたらこソースが絡まったものだと思う。
っていうか多分あんまり絡まってない。小分けにして食べたらいいのに…。
そういうと恐らく「めんどくせェ」と返事が返ってくるので、口には出さないようにした。

「うまそう」
「そうか?普通だろ。」

いやいやどこが。
高級イタリアンレストランとかのパスタと比べたらそりゃ普通だろ、ってなるかもしれないけれど、一般家庭で出すにしては上出来すぎる。
それを男子高校生が作ってしまうんだから、彼女の立場なんてあったもんじゃない。
いただきます。うん、やっぱり美味しい。
大我が作るスパゲッティを食べたのはこれで二度目だが(一度目はミートスパゲティ)、麺の柔らかさとかが私好みだと思う。
食べ物の好みが似ているのもあるのかもしれない。それはそれでちょっと嬉しい。
大我を見れば、もりもりといつもの如く豪快にパスタを口に運んでいる。
相変わらずリスみたいだなぁ…。よく一度にそんなたくさん食べれるもんだ。
中学時代、初めて彼が昼食を摂っているのを見たときはどこに入ってんだ、なんて毎回驚いていたけれど、もう慣れた。
マジバーガーで10個単位でハンバーガーを注文するのももう日常だ。
大我と結婚する人は苦労するだろうな、食費とか。
でも料理は出来るからプラスマイナスゼロか。仕事を始めたら忙しくて出来なくなるかもしれないけど。

「大我はいい旦那さんになるかもね。」
「は?」

思っていたことを率直に口に出してみる。
大我は口にパスタを入れたまま私を何言ってんだこいつ、みたいな目で見た。
どうでもいいけど口に物入れたまま喋るのはお行儀悪いよ大我くん。

「料理できるからいい旦那さんになるなーって思って、今考えてただけ。」
「じゃあかもってなんだよ。」
「食費が嵩むから。」
「それはオレが稼げば問題ないだろ…」

まぁ、そうだけど。
そんなに稼ぐアテでもあるんだろうか。
でもこれだけ料理が出来る旦那さんを持つと楽だけど立場ないだろうな。
彼女の私ですらこれだけ立場ないのに。
私も将来の為に料理勉強したほうがいいのかな。
高1の段階から花嫁修業はちょっと早すぎるだろうか。

「ね、ね、大我。今度料理教えてよ。」
「…なんか今日は話がめちゃくちゃぶっ飛ぶな…」
「私も色々考えてるんだってば。将来のこととか。」
「んで、なんで料理?」
「結婚したときに料理できなかったら困るかなって。」
「…別にそんくらいオレが…」

ん?

「大我?」
「何だよ」
「今なんて言った?」
「だから、オレがするって」
「いや…うん、そう…」

なんかナチュラルに大我の中では私と結婚する予定のようだ。
びっくりした。あんまりにも自然に言うもんだから。
高1の段階でも今付き合ってる人と結婚したいって思うのかな。
大我ともそのうち別れるだろうな、なんて考えてる私は悲観的すぎるのかただの現実主義者なのか。
どっちにしろ、大我が私との結婚を見ていることに驚いた。
大我も割と現実主義者だと思ってたのに。

「お前が何考えてっかは知らねーけどよ。今のとこ…その、オレはお前と結婚する予定だから。」
「…うん」
「だからまぁ…料理はそのうちでいいだろ」

照れくさそうに少し顔を背けて言う。
これもプロポーズの一種なんだろうか。

「大我。」
「なんだよ」
「幸せにしてね」
「…当たり前だろーが」



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