中学時代仲のよかった友達と、午前中だけだが久々に遊ぶことになった。
高校が離れて相手はバイトを始めて、なかなか会うことができなかったから何気に卒業してから遊ぶのは初めてな気がする。
中学時代から美人な彼女だったけれど、高校に入ってからメイクを覚えたようで、更に美人になっている。
睫が長い。元から長いのにつけまつげなんてしなくても。
私はそう思ったけれど、彼女はもっと濃いの欲しいかも、なんて言っていた。これがギャルか。
彼女のカラフルな化粧品を眺めていると、いいこと思いついたと言わんばかりの顔で彼女は言った。
なまえもメイクしてみなよ!と。



「…そういうわけです。」
「ナルホド」

そして今居るのは大我の家。
あの後友達にメイクしてもらい、「せっかくなんだから火神に見せたらいーじゃん!」ということで、メイクそのまま大我の家に来ることになった。
ドアを開けた瞬間の大我の呆け顔ったら。
第一声は「なんか顔違くねえか…?」顔違くないって、整形したみたいな言い方だな。
大我にとってメイクとは「大人の女の人がするもの」だったらしく、私がしていたことに至極驚いていた。
まぁ私も今までしたことなかったし、仕方ないかもしれないけれど。

「で、どうよ」
「どうよって…何がだよ。」

何がって何が。そりゃメイクが。
正直自分で鏡で見たけれど、よくわからない。
目はちょっと大きく見えるし、なんか顔もキラキラしている気がする。…それは化粧品のせいか。
ちょっとメイクしただけでモデルばりに美人になれるとは思ってはいないけれど、ちょっとはマシになってるんだろうか。
友達はかわいいじゃん!と言ってくれたけれど、見慣れた自分の顔じゃ…かわいいかなんてわかるはずがない。
せいぜいカキ氷にミルクをかけたようなものだ。

「なんつーか、やっぱり違うヤツみてえ。」
「あんまりよくない?」
「よくないっつーか、その…か、かわいいとは思うけど、よ」

ちょっと目をそらして頬を染めながら言った。
大の男が、こんな照れた顔をするのが私はものすごく好きだ。
やっぱり多少はよくなってるのかな。
メイクして劣化するタイプの人間でなくってよかった。
友達のメイクが上手かったのもあるけれど、好きな人にかわいいなんていわれたら万歳だ。

「これからメイク勉強しようかな。」
「えっ…」
「え?」
「いや、」

その、なんつーか。歯切れの悪い返事。
こういうときは大体嫌がってるんだ。
他人には割とモノをはっきり言うのに、大我は私にはあまりはっきり否定しない。
嫌なとこがあったら言ってよ、って言ってもそーするって言っておしまいだ。

「メイク嫌なの?」
「いや別に嫌ってわけじゃねーけどよ…」
「じゃあいいじゃん。大我もかわいいって言ってくれたし。」
「あれは…!」
「お世辞?言うようなタイプじゃないと思ってたんだけど…」
「お世辞じゃねえよ!マジでか、かわいいと…思うけど」

けど?と顔を覗き込むとまた目を逸らす。
ずい、と噛み付くように身を乗り出すとついに折れたのか、頭をガシガシ掻いた。

「メイクはかわいいとおもうけどよ、なんか…あんまり外にしてってほしくねえんだよ」
「…。」
「っあー!こういうの嫉妬みてえだからヤなんだよ!」

顔が沸騰しそうになった。
全身の血が顔に集まってる気がする。
うつむくと少し顔を赤くした大我が覗き込むように見てくるので、頭を抑えてやった。
…今の顔はちょっと人にみせられたようなもんじゃない。

「…ばかがみ」
「んなっ誰がバカガミだよ!つーかそれ誰に聞いて…」
「うっさいバカガミ。相田センパイに聞いたにきまってんでしょ」
「は?!カントク…っていつの間に知り合って…」
「もーいいから!あっちいって!顔みないで!」
「は!?なんでオレ怒られてんの!?」


そんな嬉しいこと言われたら顔めちゃくちゃにやけちゃうじゃないの。





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