箱根学園女子夏制服、変型ブラウスの襟は深い。
紐リボンがあるからなんとかなるものの、鎖骨の見える開いた襟は男子生徒の目を集めた。
女子からはかわいいと評判らしいこのデザイン。それが荒北には理解できなかった。
目の前のクラスメイト兼マネージャー、みょうじを含む女子数人は開いた襟をさらに開けて涼をとっている。
ぱたぱたと空気を取り入れるためにボタンの空いた襟を揺らす光景はなかなか眼福だ。
荒北は周りの男子をそんな目で見てんじゃネェヨと見下しながらも、みょうじの胸元にちらちらと目をやってしまっていた。

「あ」

ケータイに夢中になっていたみょうじが立ち上がる。
そのあとカバンから何かを取り出して確認する仕草を見せた。
友人の目を適当に交わして寄ってきたのは荒北の元だった。

「荒北、これ渡すの忘れてた」
「アァ?」

渡されたのは次の大会の書類。
参加するって話、そういやあったなァ。
なかなか渡されないと思ったら、みょうじが持っていたらしい。
適当に礼を言ってプリントからみょうじに視線を戻すと、あることに気づいた。

「ア」
「?」

この角度、ヤベェよなァ。
じっと目を顰ませる。
紐リボンがほどかれてボタンの一つ開けられた胸元は、正面からならなんてことないが上から見ると…絶景だった。
白かァ、と考えて、不審そうな顔をするみょうじに気づきはっとした。
何考えちゃってンのォ、オレ!
照れ隠すように、みょうじのブラウスのを無理矢理ボタンを留めた。
突然胸元に手を当てられたみょうじ及びクラスメイトは動揺したものの、ボタンかと察すると、母親かよ半分、何勿体無いことしてんだよ半分の視線を送った。
昔妹にやっていたことだが、今このどぎまぎした気持ちのままボタンを留めようとなるとなかなか難しい。
時々腕に当たる柔らかい感覚を振り払うように強く止めようとするが、布を動かしすぎてついには第二ボタンも外れる始末。

「あ、」
「悪ィ、とめ」
「おーい靖友ーなまえーあのプリントだけど…ん?なにやってるんだ?」

突然訪ねてきた新開に二人は固まった。
前後を見ていればそんなことはないのだが、今この状況を切り取った新開には、どう見ても荒北がみょうじのブラウスを脱がせようとしてる風にしか見えない。

「…ヒュウ!大胆だなお二人さん。でも、時と場合を考えた方がいいぜ」
「少なくともお前が考えてるようなことはしてネェヨ!」

荒北と新開の追いかけっこが始まる。
一人取り残されたみょうじは、自分でボタンを留めて周りの目から逃れるように席に着いた。


140129



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