2年になって、自分だけ違うクラスになった鳴子は自転車部の面々を待ったり、待たせたりすることが多くなった。
正直、時々さみしいと思うことはある。
気遣ってくれていても話がわからないこともあるし、だからといって拗ねるわけでもないが気にはなる。
だが、そういう場面でも自分だけ除け者になっていると感じずにいられたのはもう一人のマネージャー、みょうじもまた別のクラスだったからだ。
去年は寒咲と同じクラスで部活中はずっと一緒だったけれど、クラスが変わってからは時間が合わないこともあり、仲は変わらないものの接し方が変わったように鳴子は思う。
その分、小野田たちのクラスが遅い時などに、二人で待っていることが増えた。
一緒に居る時間と共に会話も増え、小野田たちがクラスの話で盛り上がっている間も二人並んでいることが多くなった。
正直、あまり悪い気はしない。一年の頃より、ぐっと距離が近づいた。
気になってはいる。恋心というにはまだ弱すぎる想いだった。


その日も小野田達のクラスはホームルームが長引いていた。
各部室の鍵は職員室と、部長が管理している。
今日は進路関係の学年集会があるため、3年のホームルームが長引くからと事前にことづけられていた鳴子は職員室へ向かった。
挨拶をして職員室へ入りキーボックスを開けるがそこには鍵はない。
誰かが持って行ったのだろうと、特に気にすることなく無駄足を踏んだと思いながら部室へ向かった。
今年のインターハイも優勝する。そのためには、時間を惜しまなければいけない。
自分達が強くなった分だけ、相手も強くなる。
今年は田所もいない。泉田を抑えるのは自分だ。
小野田たちを待つより先に着替えていよう。鳴子は無言で部室のドアを開けた。

「あっ」
「お?」

部室には電気が着いていた。
鍵がなかったのだから、誰かいると思ってはいたが。
そこにいたのはみょうじだった。自分より先に鍵を取り、部室に来ていたのはみょうじだったのだ。
それだけなら問題はない。鳴子は目の前の光景を確認する。
目の前のみょうじは服を着ていなかった。
ブラウスはベンチに適当に置かれていて、Tシャツの裾を両手で広げて、今まさに着ようとしている。
白い背中には柔らかい肌を締め付けるように桃色が横断していて、それは柔らかな部分へと続いていた。
つい、目が奪われた。
それから「やってしまった」と自覚して叫んだ。
おそらく叫びたいのはみょうじの方だろうとわかってはいたが、勝手に声が出た。

「っすまん!」

その声に負けないくらい大きな音を立てて重い部室のドアを閉めた。
閉まったドアに背を預けるようにして、ずるずると腰を下ろす。
鳴子の顔は自分の髪に負けず劣らず真っ赤に染まっていた。

(アカン、最低や。ワイ、確認せんと。)

一年生が鍵を開けることは滅多にない。
もし先にホームルームを終えていても、いつもは部室の前で待っている。
小野田たちのクラスが終わっていなくて、3年でもなく、鍵がとられていたのだとしたら、みょうじだと一番最初に気づくべきなのに。
ノックくらいするんやった。鳴子は後悔した。
嫌われてないかと心配しながらも、思い出すのはあの白い背中と桃色で。
アカンアカンと自分の頭を握り拳で何度も殴りながら、この場にいたのが自分でよかったと。スカシや杉元やなくてよかったと。そう思った。


140115



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