大学に入って、忙しくなって、それでも必死に都合を合わせて作った時間だ。金曜の夜から日曜の朝まで。日曜はそのままお互い練習とバイトだ。
バイトが終わってすぐに隼人の一人暮らしのアパートに向かった。久々のゆっくりした時間に明日どこに行くか話し合うはずだったのに、この時間が気持ちよくてそのままずるずるなんてことない話をしながら晩御飯を食べてお風呂に入ってベッドに潜ってしまった。

「こら、目ぇ悪くなるだろ」
「ぎゃ」

隼人とイチャついてる間に来ていた友達からのSNSへのメッセージに目を通していると、後ろから抱きすくめられていたはずの腕が、私の顔を捉え目に被さった。
ずっと布団の中にあった手は暖かく、冷えた私の顔に当たるとじんわりと温もりが伝わる。
そのままもう片方の手でケータイを奪い取られ、電源を落とすと隼人側のベッドサイドテーブルに置かれた。これでは届きそうにない。

「そんなにケータイが気になる?」
「そういうわけじゃ………」
「一緒にいる時くらい、構ってくれてもいいだろ」
「んん、」

首筋に唇を寄せられて、くすぐったさに声が出る。ケータイを奪った腕は私の腹部に戻り、体を抱き寄せていた。
隼人の硬い足が私の足に絡まり、より体が密着する。首筋へのキスと時々漏れる吐息がもどかしい。
顔だけ隼人の方へ向けると、大きなたれ目と視線がかちあった。
それを合図にするように、瞳を閉じて唇を合わせる。
いつの間にか緩んだ腕は私の顔の隣に来ていて、押し倒すような姿勢になっていた。
横を向いていた体を動かし仰向けになり隼人を見上げると、長い髪が綺麗な顔に影を落としている。
前髪に指を通すと、ふわふわとした髪が絡まった。露わになった狭い額と髪の生え際。黒くなってると指摘すると、マジかと私の手を退けさせてわしわしと前髪を乱す。

「明日染めに行く?」
「いや、また後でにするよ」
「時間あるの?」
「せっかくの二人きりだからなぁ、もったいないだろ」

再び合わせるだけの口づけ、何度も何度も着いては離れを繰り返すだけのそれは、会えない時間を埋めるように回数ばかりが重ねられた。
腕を伸ばし首に回すと、私の意図を汲んだ隼人が唇を舐め、口を開かせる。
ざらりとした舌が口内を這いずり回る感覚は未だに慣れることがない。逃げるように引っ込めた舌もすぐに捉えられ、唾液と共に絡まった。
そのまま舌先を吸われると、口の端から何かがこぼれて伝う。それを気にしないから、もう口の周りはべたべただ。
一度離れた隼人舌が私の口の周りを舐めとった。ほとんど頬に近いところまで舌を這わされ、少し顔を動かして抵抗すると、舐めた部分を人差し指でなぞられ、その指が口に押し込まれた。

「ん…」
「あー、食っちまいてぇ」
「う、」
「冗談だって、噛むなよ」

既にもう食われているようなものなのに。爪を強く噛むと痛かったらしく、すぐに指が引き抜かれた。これじゃ、隼人を食べているのが私みたいじゃないか。
うっすらついた歯型を愛おしそうに舌でなぞる隼人に、今度は私が頬に口付ける。
この状況で頭を持ち上げるのは首が苦しいから、隼人の頭を下ろすように抱き寄せた。
男のくせに綺麗な肌は、白いとは言えないが唇で触れた時の感覚が気持ちよくて、ついばむうちに目尻や米神にまで到達した。
耳を優しく噛んで、いつもされているみたいに淵をなぞるみたいに舐める。
くすぐったさに逃げた頭を逃さないようにホールドして、旋毛に唇を寄せてキスをした。やっぱり根元は黒くなっていて、高校の頃からこの色だったから気にならなかったけど、黒い隼人も見てみたいな、なんて思ったりした。
黒髪もきっと似合うけど、でも一番はやっぱりこの色だろうなあ。明るくて少しくすんだ赤色にも近い茶色。私の中でこの色は誰が使っていようと、隼人の色だ。

「隼人…」
「んー?」
「んん…」
「くすぐったいよ」

緩んだ腕から逃れた頭がさっきと同じように私を見下ろした。
握っていた髪が少しくせになっている。それを撫でるように直して、いつもみたいに整えてやった。かっこいい隼人の出来上がりだ、いつでもかっこいいけれど。

「なあ、明日どこにいくか決めたか?」
「まだ決めてないけど…行きたいとこあるの?」
「いや、行きたいとこはないんだけど」

明日もこのままずっと二人で寝てちゃダメか、って…思って。

そう囁かれたら、もうベッドからは逃げられない。


140423



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