無駄にでかい窓からは容赦なく日光が差し込み、オレの瞼をこじ開けようとする。
ケータイのスヌーズになったアラームがそれを手助けするように、脳を睡眠から引きずり出そうとしていた。
繰り返し同じ音が流れているのを聞くと、どうにも不快に感じてくる。
何回目なのか、いい加減に鬱陶しくなってきたオレは布団から手を出し、手探りでベッドサイドに置かれたケータイを見つけると、サイドボタンを押して音を停止させた。
腕をまとわりつく冷えた空気が身体を冷やし、ぶるりと震える。春といえどまだ朝は寒く、離れたのは一部分、一瞬のみといえど布団が恋しくなる。
そういえば昨日、何も着ないまま寝てしまった気がする。寒いはずだ。
もともと大きいとはいい難い目を薄く開きベッドの下をみると、雑に脱ぎ捨てた下着が落ちていた。履くにはここを出なければいけないし、悩んだ末に見なかったことにして、再び布団にもぐる。

「ん、しゅんす…」
「起きたのか」

隣で丸くなって、もぞもぞと身を捩るなまえもまた、一糸纏わぬ姿だ。
昨晩のことを思い起こさせる光景に、少し顔が火照ったように熱くなった。
濡れた瞳、まだ頬には涙の跡がうっすら白く残り、乱れた髪も、淡く散らされた赤い跡もそのままだ。
動いたことによりずれた掛け布団を掛け直し、オレもその中に収まると、なまえが瞼を閉じたまま、オレに身を寄せる。
無自覚だろうがその愛らしい行動に意識を奪われ、背中に腕を回し抱き寄せると、体温が直接伝わってきた。
柔らかい肌にオレの手が吸い付き、このまま離したくないとも思う。幸せだ、なんて柄にもなく思って、より近くに抱き寄せた。
…だが、こういうことをしている場合ではない。今日は休日だから学校はないものの、昼からは部活だ。
それに、日課の自主練もある。あの赤頭には負ける訳にはいかないし、練習の距離ですら負けたくない。あいつよりできるだけ先を走っていたい。
どことなく怠い身体に鞭をうち、起き上がった。まだ微睡みの中にいるなまえの肩まで布団を掛け、身支度を済ませる。
歯を磨いて顔を洗って、部屋に戻った時にはなまえはベッドの上で身体を起こしていて、まだ重そうな瞼をごしごしとこすっていた。

「しゅんすけ…もう行くの?」
「ああ、自主練だからな」
「そっかあ」

へらりと笑うなまえについ口が緩む。なぜだか今日は、いつもよりいいタイムが出る気がする。
まだ寝ていていいと言ったのに、なまえは周りに散らばった衣服を集めて着替えを始めた。
事後の身体に布が纏われていく姿は、目に毒だ。正直自分のいないときにして欲しいという思いはあったが、そんなことは言えない。
意識していると思われそうで、オレの高いプライドがそれを阻害した。
あんなことをしておいていまさら照れるのも変な話だと、自分でも思う。
だけれど、下着を身につけ、服を頭から被るなまえを直視することができず、不自然にそっぽを向いた。
こうでもしなければ、また履いて間もないレーパンが苦しくなりそうだ。童貞か、オレは。
それも、つい数時間前に卒業したばかりなのだが。

「お前、オレの前で着替えて恥ずかしくないのか?」
「ん?恥ずかしい…けど、でも昨日に比べたら全然」

照れ臭そうに笑うなまえに、頭を抱えた。
朝からそんな爆弾を投下されて、平常心で居られるわけがない。
これから自主練だというのに。いつもより長い距離を走る予定だった、のに。

「なまえ」
「なに?」
「帰ってくるまで…その、いや、違うな。オレが帰ってくる頃に、もう一度ここに来てくれないか」
「いいけど…どうして?」

女のために頑張るだなんて、こいつがたまに読んでいる少女漫画でしか見たことがない。馬鹿らしい、ロードは自分が一番先頭に行くために走っているというのに。

「走り終わった後、一番にお前に会いたいんだ」

だけど、これも悪くないかもしれない。



1404020



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