商店街って、どうしてなんでもお得に見えるんだろう。
靖友くんのうちに遊びに来て、どうせだからと靖友くんの地元を回りたいなとお願いして連れてきてくれたのは靖友くんのうちから徒歩で5分ほどのところにある商店街だった。
最近は商店街のシャッター街化が進んでいるというけれど、ここはそんなこと知りませんと言わんばかりに賑わっていて、商店街といえど有名なチェーン店が入っていたり、珍しいものの専門店が入っていたりと普通に見て回っていても退屈しなさそうだ。
私はといえば色んな店に入るたびつい買い物をしてしまって、靖友くんに咎められている。
お前こないだ金欠つってただろーが、ってほっぺたを引っ張ってくる靖友くんは、前に休みが合ったときにデートするかって声をかけて「お金ないから」と断ったことを根に持っているらしい。
あの時は本当に申し訳ないことをしたけれど、そこまで言わなくてもと思う。なんだかんだでおうちデートをしたのだし、普段は人ごみがキライだからデートヤだ、なんて言うくせに面白い人だ。

「だってさ、これ!かわいくない?」
「ただの犬のキーホルダーだろォ」
「ほらこっちのアキちゃんに似てる!」
「色が一緒なだけだろ」

手作り雑貨のお店の犬のキーホルダーに私はさっきから夢中で、どのワンコも可愛くて選びかねているというのに靖友くんは興味なさげにはしゃぐ私を見ている。
犬の飼い主とは思えないくらいのドライっぷりだ。ちょっとくらい興味を示してくれてもいいのに。
まぁ、本物のアキちゃんに対してはなんだかんだでデレデレだというのは実家に行ったときに散々見せてもらったので、今は黙っといてあげよう。
反応の悪い靖友くんに、猫もあるよと同じ系統の猫型のストラップを見せると、ぴくりと反応を見せた。
犬を飼ってるのに猫派なんてめずらしい。私はどっちも好きだけれど、犬を飼っている人は大抵犬派だと思っていたのだが、どうやら靖友くんの下の妹が猫アレルギーらしかった。
おずおずと手を伸ばしてきた靖友くんに黒猫のキーホルダーを見せると、ちょっとかわいいと思ってるんだろうか、微妙に口元が緩んでいる。
同じ形で白猫のもあるよ、と差し出すと、それを引っつかんで店の雰囲気に合わない柄の悪い歩き方でレジのほうへ持っていった。
割と乱暴にレジ台にキーホルダーを二つ置いたというのに、お店のおばちゃんは気を悪くするどころか、そんな靖友くんをみてにこにこと笑っている。きっと、怖い顔をしてないんだろうな。
紙の封筒にいれられたその二つをお店を出てから開封して、白色を私に押し付けた。
財布を出そうとする手は無理矢理押さえられ、変わりにケータイを奪いとられると、既に友達と修学旅行でおそろいで買ったいるかのキーホルダーがついた横にそれが起用にはまる。
靖友くんのにはいるかはついていなかったが、同じ様にして黒猫がぶらさがった。
独特の目の細め方をした黒猫が靖友くんのズボンの端から笑っているのがなんだかほほえましい。

「おそろいだね」
「っせ!」

大きい口でそういうけど、ちっとも怖くない。だって、すごく嬉しそうなんだもん。


140329



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