告白してきたみょうじさんを振ったのはもう一週間前のことになる。
それなりに話すクラスメイトという関係で、仲は悪くなかった。話してて楽しいし、他の女子ほど気を使うこともない。
だけど付き合うかっていうとまた別の話で、今はやっと乗れるようになった自転車に集中したかったし、恋愛感情として好きかと言われると首を傾げてしまう。
これからも友達でいよう、とありきたりな結末を迎えた後は告白される前と特に変わりはなく、むしろ普通は振られたら落ち込んだり距離を置いたりするもんなんじゃないか?と不思議に思うくらいなにもなかった。
オレのことが好きってのは嘘だった、と言われた方が納得するくらいの引きずりのなさに気になってしまっているのは事実で、オレの目線は自然と、告白される前よりもみょうじさんを追いかけた。
彼女を見るようになってわかったのが、オレが思ってる以上にみょうじさんは交友関係が広いということ。
クラスでも見るたび違う子と話してるし、女子はもちろん、男子とも誰とでも話す。
ちょっとチャラついた奴や、おとなしくて普段あんまり目立たないような奴とも楽しそうに話している。
廊下に出れば別のクラスのやつに話しかけられているし、後輩にもみょうじ先輩と慕われているようだ。
オレはみょうじさんと仲のいいほうだったんじゃと思っていたけれど、実はそうじゃないんじゃないかと思う位に彼女はいろんな奴に囲まれていて、なんだかもやもやする。
それが確信に変わったのは廊下で窓の縁に手をかけながら楽しげに話す尽八とみょうじさんを見かけた時で、囲まれているならまだしも、女子と一対一で話す尽八なんて珍しくて、思わずその場に立ち止まってしまったほどだ。
いつも通り大きな口ではつらつと話す尽八の言葉に、くすくすと笑っているみょうじさん。
すげー楽しそうで、笑過ぎて目尻に涙なんか浮かべてる。
それをハンカチで拭う尽八とみょうじさんはどう見てもお似合いのカップルで、オレのことが好きだったんじゃないのかと振った癖に理不尽な感情が浮かんできた。

「尽八、みょうじさん」
「おお隼人!どうした?」

気がつけば声をかけていた。
二人は笑顔を絶やさないまま、オレを輪に入れる。
みょうじさんは相変わらず変わらない。どうしたのと見上げる瞳に、オレはどう映ってるんだろうな。

「二人、仲いいんだな。初めて知った」
「ワハハそうだろう、みょうじちゃんとは1年の時に同じクラスでな、オレの美しさをよくわかっているんだ」
「美しさって…あはは、まあそうだね」

美しいだろう?はいはい美形美形、と漫才を始めた二人の言葉は耳に届かない。
じわじわと目覚め始めた感情は、『渡したくない』というものだった。
笑っちまうな、今更気がつくなんて。

「ん、どうしたの新開くん、変な顔して」
「む?さてはアレだな?オレとみょうじさんの仲に嫉妬しているのだな?」
「ああそうだよ」
「まあそんなに妬かずともみょうじさんは…ん?」
「え?」
「…みょうじさん」

オレの言葉に疑問を覚える尽八を前に、頭の整理がついていないみょうじさんの肩を抱き寄せる。
身体を屈めて、顔を寄せた。シャンプーの甘い匂いがオレの鼻を擽る。

「おめさん、オレと尽八どっちが好きなんだ?」
「えっ?!」
「なあ…答えてくれよ」

自分でも驚くほどに低い声。どうしちゃったんだろうな、オレ。
沸騰しそうなくらい真っ赤になったみょうじさんに唇を歪めた。やっぱりオレ、欲しいものは必ず仕留める主義なんだ。


140309



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