服を着替え、迎えに来た荒北に連れられ、イルミネーションで彩られた街を歩いた。
どこもかしこもクリスマス一色。ムカつくくらいの電飾と赤と緑の補色同士が戦っている。
一旦家に寄ったため荒北が買ってくれたケーキはウチで冷えることとなったが、そのまま出てきてしまったので薄っぺらいカバンの中身は少量のお金が入った財布とケータイだけだ。
駅前まで歩いて、24時間営業のファミレスの看板を見つけた荒北は、ここはいんぞと足を早めた。
それを小走りで追いかけ中に入ると、思ったよりも空いていて、カップルたちはみんな高いレストランに行ってるのかとか、むしろもうこの時間ならホテルだの彼氏の家だのに行ってんのかとか、無駄にリア充クリスマスを想像させられてしまった。
通されたのは四人用の席で、向かい合うようにして入りメニューを渡される。とりあえずドリンクバー。
荒北が鳥肉のグリル的なものを頼んだので、当初の予定通りホワイトソースのパスタを注文した。

「ドリンクバー、何すんのォ?」
「え、いや私行くよ」
「一人は席いねーとあぶねェだろ」
「…メロンソーダで」

お言葉に甘え、一人席に残る。どうしてこんなことになったんだ、とぼんやり考えたが、窓の外のクリスマスの景色を見たらどうでも良くなった。
ちらちら雪が降っている。外、寒かったもんなあ、ホワイトクリスマスか。
荒北が席に戻ってきて、私の前にメロンソーダを置いた。荒北の前にはコーラがある。どちらも丁寧にストローの袋が破かれたまま刺さっていた。
お礼を言うとぶっきらぼうな返事で、荒北らしいなと思う。
そういえば、荒北が誘ってくれなかったら私、サミシマスだったんだよなあ。
家帰って適当にお風呂入って、コンビニのパスタあっためて食べて、それから寝る。おわり。
花の高校生だというのに、味気ないクリスマスだ。そう考えると、これはだいぶんいいことなんじゃないかと思えてきた。
相手が誰であれ、二人で過ごすクリスマス。友達って言っていいほど仲がいいのかは微妙だけど、荒北のことは嫌いじゃないし、こいつも私を誘うってことは、私のことはそんなに嫌いじゃないんだろうな。

「あァ?何だヨ」
「え、なにもない」
「何もねェならジロジロ見んな!」
「あは、ごめん」

お待たせしましたと注文したものが届いて、お互いの前に並べられた。
荒北の鉄板がお熱くなっておりますという鳥肉のグリルとホワイトソースパスタ。クリスマスになんとなく掠っている。チキンとホワイト的な意味で。
フォークをスプーンの上で巻いて食べるのは特訓済みだった。きゅるきゅると巻くと荒北の視線がそこにいくのが面白い。
食べないの?と指摘するとウッセと見てきたのは自分なのに怒られて、理不尽さについ笑いが出る。
過剰にフーフーしているけれど、猫舌なんだろうか。

「お前さァ」
「ん?なに」
「よかったわけ」

よかった、とは?
パスタをもぐもぐしたまま首を傾げると、ついてんだヨと備え付けの紙ナプキンで口元を拭われ、コイツお兄ちゃんだなと直感した。
荒北の質問の意図がよくわからずに再び首を傾げると、少し唸って、呟く。

「クリスマスにさァ、男とメシ行ってヨ」
「なに、来て欲しくなかったの」
「そうじゃねェヨアレだアレ、他に一緒にいたいヤツいたんじゃねェのォ?!」
「あー、そういう」
「いたのかヨ」
「彼氏とデートだからって振られました…」
「…友達じゃなくてェ」

友達じゃないならなんなんだ。パスタから顔を上げ、荒北を見ると、驚いた。
耳まで赤くなっている。こいつまさか。

「…好きな人は別にいないよ」
「え」
「ていうかさ、普通荒北についてきた時点でわかるでしょ」

察しろよボケナス、とはさっきの仕返しだ。
クリスマスだからって大胆になったのか知らないけど、いちいち分かりづらいんだよな、荒北って。
素直に誘ってくれればよかったのに、寮の前のベプシが二列並んだ自販機をスルーしてわざわざコンビニまで来てさ。
まあ、私も今の今まで気づかなかったんだけど。
パスタをスプーンの上で巻く。ねじまきのようだと、これをするたびに思う。
巻かれたねじ、丸くなったパスタを荒北に突き出すと、断りもなくかじられた。

「メリークリスマス、荒北」


140303



戻る

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -