内緒だからな?厚い唇に指をあて、招かれたのは彼の寮の私室だった。
ベッドが部屋のほとんどの面積を占めるその空間で、寝るかと誘われベッドに倒れたのは三十分前のこと。
何をするわけでもないのに、そこに横たわっているだけでドキドキしてしまうのは、私が隼人くんに抱えている想いを考えれば当然のことだ。
硬い右腕をまくらにして、左腕は私のお腹に回されている。
隼人くんの体温を間近に感じるこの距離が心地よい反面落ち着かない。
髪に埋められた鼻と唇が呼吸するたび、私の心臓がどうにかなりそうだ。
寝るって休息のための行為じゃなかったっけ?それすら忘れるほどに身体が覚醒している。

「…なまえ起きてる?」
「起きてる、よ」

寝れるはずがない。
寝ポジションが定まらないのか、極力腕を動かさないようにして隼人くんが体を動かすのがわかった。気を使わなくてもいいのに。
耳元で名前を呼ばれて肩をはねさせると、横腹を撫でるように回されて向かい合う体制にされた。
呼吸がかかるような距離。0距離は今まで何度も繰り返したけれど、触れそうで触れない距離が続くのがもどかしい。
微かにベッドから持ち上がった頭から頬にキス、何度も落ちるそれに唇を突き出すと、やれやれという風にようやく合わさる。

「寝るんじゃなかったの?」
「なまえが可愛いから寝れなくなっちまって」

なんだそれ。練習で疲れて、でもたまの休日だから会いたいって言われて、だから間をとって一緒に寝ようってことになったはずなのに。
寝なさい、と隼人くんの顔を両手で覆うと、口に当たった部分がぺろりと舐められて、つい退けた手から覗いた顔の、にやりとした笑み。
火をつけてしまったのだろうか。
名前を囁かれて、私の首の下にあった腕がゆっくり抜かれた。
代わりに上から隼人くんが体重をかけてきて、見えるのは天井だ。

「はや…んっ」
「かわい」

首に口付け。跡をつけるのが好きらしい隼人くんのマーキングのような行為に口を手で抑えて耐えた。
しばらくして甘い刺激がなくなったあと、隼人くんがうんともすんとも言わなくなる。
埋められた首筋には息がかかっているけれど、どうしたのだろう。
名前を呼んでも頭を軽く叩いても反応はなく、どうしようもない。

「…寝てる」

聞こえてきた寝息についたため息は私のものだ。
私だけこんな風にされて、自分はちゃっかり寝ちゃうなんてさ。
起きたら仕返ししてやろう。そう決めて、鼓動を無理やり抑え込むようにしてまぶたを閉じた。


(寝てないけど、このままじゃヤバイからな。用意してないし。ああ、これからどうしよう)


140215



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