2 あと一人



 
 
お母さんから大阪に行くと告げられた次の日。
私は重い足取りで学校に向かっていた。
 
・・・今日はゆっきーとか真田にいわなきゃ。
ブン太とジャッカルと柳生と仁王にも。。
ほかの部員にも。。
はぁ、気が重い。
 
ため息ばかりついていると
後ろから鞄で頭を叩かれ振り返る。
 
『・・・なんだぁ、赤也か』
「なんだって、ひどいっす!
 玄関まで一緒しましょ!」
 
赤也は横にきて
私と同じ速度で歩いていくれた。
 
『・・・テニス部のみんなにいわなきゃ。
 みんな、どんな反応するんだろ』
「そりゃー、みんな悲しがりますよ。
 特にま、・・・いや、今のなしで」
『え?・・・まぁ、ほんと放課後こないでっておもったの
 初めてだよ。。。』
「・・・オレ、なにもできなくて・・・」
 
横を見ると明らかにしょんぼりしている赤也。
 
『なにいってんの!
 昨日赤也がいてくれただけで私結構すくわれたんだよ!』
「ほんとっすか。。
 そんだけしかできなくて、オレ。」
 
ネガティブなことしか言わない赤也の鼻をぎゅっとつまんでみる。
 
「うっ」
『ばーか!もう言うな!
 私はそれでうれしかったっていってんの!』
 
赤也はつままれた手をはらって
にっと笑った。
 
「・・・あ、もう。玄関だ」
『ほんとだ。じゃ、放課後ね!』
「うす!」
 
赤也に手をふって私は教室へ向かった。
 
 
 
 
その日は時間があっという間に過ぎて行った。
ずっと引っ越しのことしか考えてないから
授業なんて何も聞いてない。
耳にはいってこなかった。
外を見るともう夕日が目の前にあって
時間を教えてくれた。
 
・・・もう、いかなきゃ。
 
 
テニスコートへ急ぐと、
もう部員はみんないて練習をしていた。
この光景を見るのもあと数日。
こみあげてくるものを抑えてゆっきーのもとへいく
 
『ゆっきー!』
「ん?・・・なんだリョー子か。どうしたの?」
『今日ね、みんなに話あるからね、少し時間ほしいの!』
「話?・・・わかった10分くらい早めに切り上げるね」
『ありがとう!』
 
私は急いでドリンクを作りに行く。
もうドリンクを作るのもあと少しなんだ・・・
いつものマネージャー業をする度
あと何日だけ、もう少しで、
と考えてしまう。
 
・・・こんなことばっか考えたらだめ!
ちゃんと・・・集中。
 
 
そして部員の練習を見ていると
いつのまにかもう日は落ちていた。
 
「集合!今日はこれで終わりだよ」
「ん?幸村。まだ10分あるじゃないか」
「リョー子からみんなに話があるらしい」
「リョー子が?」
 
ゆっきーと真田の会話を聞いて
部員が私のほうに集中する。
 
『えっと、、
 昨日決まったことなんで、
 私もすっごい驚いているんですけど・・・
 私、神奈川から大阪に引っ越しすることになりました。
 今週いっぱいで・・・立海やめます。
 ほんと、ごめんなさい』
 
礼をして顔をあげると
部員みんながまだわかっていない状態だった
 
「・・・どっきり?これどっきり?」
「・・・ま、まじか?」
 
ブン太とジャッカルが二人で顔を合わせて
ドッキリだと思い込んでいる・・・
 
『ほんと・・・ドッキリだったらよかったっ・・・のに。』
 
抑えられない涙をはきだしたら
みんなが本気だと気づいた。
 
「ホント・・・なんですか」
「・・・うそじゃろ。」
 
柳生と仁王の声も聞こえた。
すると私の肩をもってきた人がいた。
 
「先輩、がんばったすね」
 
耳元でささやいてきた声・・・赤也だ。
・・・泣いてちゃいけない。
そう思った。
私は顔をあげてまたみんなのほうを見る。
 
『・・・私、あと少し、前よりも精一杯マネ業するんで
 あと少し、あと少しよろしくおねがいします!』
 
するとみんな笑顔になって
大きい声でよろしくおねがいします!≠ニかえってきた。
 
 
 
ただ・・・一人を除いて。


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