1 歩きだす時



 
 
「・・・ていうか、マジで大阪いくんすか。。」
 
 

『う、・・・うんっ・・・っ』
 
 
 
 
 
 
 
 
私が大阪に行くという話になったのは
昨日のことだった。
 
『は!?もっかい言って!』
「え?だからっパパの昇進が決まって
 大阪転勤することになったの〜♪」
 
いつものように帰ってきて
お母さんに今日の晩御飯を聞いたら
こんなことを言ってきた。
 
・・・マジなのか、ネタなのか、わからない。
 
『ねぇ、ほんとにいってんの?』
「え?パパの昇進うれしくないの?♪」
 
『・・・』
 
ルンルンで言ってくるお母さんに言葉がつまる。
 
『大阪に・・・行くってことはさ、
 転校、、するってことだよね?』
「んー、そういうことになるわねっ」
 
いつもながら、このお母さんのテンションには
本気でキレそうになる。
・・・私の気持ち理解しているのか。。
 
『私、、神奈川残るよ。
 この街好きだし、立海も好きだし・・・』
「リョー子ちゃん、お母さんたちと住みたくないの・・・?」
『そういうわけじゃない。・・・立海にいたいの』
 
顔を上げると、今にも泣きそうなお母さんの姿。
私はこの顔にすごく弱い。
何も言えずため息がでた。。
 
『いつ・・・なの。行く日』
「え?♪んーとねっ、来週!」
『は!?嘘でしょ!?』
「もう住居とか決めてあるからいつでもいけるんだけどね♪
 ほら、学校の転入手続きとかあるからっ」
『・・・』
 
飽きれて、悲しくて、驚きすぎて何も言えない。
 
 
『・・・上、いってくる』
 
 
お母さんに泣いているのを見られたくないから
急いで自分の部屋へとあがった
 
そして、ある人物に電話をかける。
「もしも・・・」
『うわーん、っ、っ、、どうしよー・・・っ』
 
「!?ど、どうしたんすか!?
 ななな、泣いてる!?なんかあったんすか!?」
 
私が電話をかけた人物・・・それは赤也だった。
 
『あかやぁぁぁ・・・もうっどうしたらいいかっわかんなっ』
「リョー子先輩!ちょぉぉっと待っててくださいねっ!
 切ったらだめっすよ!」
 
そういって赤也の後ろがガタガタいっていたが
そんなことなど気にせず
今、お母さんから聞いた話を赤也にぶちまける。
すると窓の外から赤也の声が聞こえた。
 
『リョー子先輩!でてきてくださいよぉ!』
「・・・赤也!?・・・え!?」
 
赤也を見て携帯を見て
もう一度赤也を見るとニッと笑って
手をふってきた。
 
『い、いまいくから!』
 
 
お母さんにバレないように
そーっと階段を下りて玄関に向かった。
 
「あっ、どーもっす!」
『・・・きてくれたの?』
 
「だってめっちゃ先輩泣いてるし!」
またニコッと笑って携帯をポケットの中にいれた。
 
赤也の笑顔を見たら
何でかほっとしてまた前が滲む
「わわわわわ、先輩!オレがきた意味ないじゃないっすか!」
『赤也、、ほんっとバカ、、』
「す、みません、・・・ここじゃなんですから公園でもいきましょ」
 
赤也は私の手をとって
私の家からすぐの公園のブランコに腰かける。
私もその隣に座った。
そして赤也から話を切り出す
 
「・・・ていうか、マジで大阪いくんすか。。」
『う、・・・うんっ・・・っ』
「・・・オレは行ってほしくないっす。
 でも、これはしょうがないこと・・・なんですよね」
『・・・』
 
「あ、幸村部長とかには」
『まだ、・・・赤也に初めていったんだよ・・・』
「・・・ありがとうございます。
 でも・・・なんで、ですか?」
『・・・え?』
 
そういえば・・・なんでだろう。
別に部員に比べ特別仲が良かったわけでもない
好きという気持ちも・・・ない。
・・・わからない。
 
『なんで、だろ。わかんないや』
 
ハハッと笑って赤也を見ると
赤也は真剣な顔をしてこっちを見てくる。
 
「オレは、うれしかったっすよ、今の。
 オレに一番最初に言ってくれて。
 ・・・オレ先輩のこと」
『あ、ありがとね。赤也のお蔭でなきやんじゃったー
 来週だからあと7日か。
 明日にはみんなに言わないとね』
 
私は赤也が何を言うかわかっていた。
でもさえぎってしまった。
なんでか、、自分の気持ちがわからなかったから。
そんな理由で人の告白をさえぎるなんて最低だと思う。
でも咄嗟の判断でいってしまった。
次の瞬間本当に後悔したのはいうまでもない。
 
「・・・先輩。。オレ、先輩が大阪いっても
 毎日メールします!いい・・・っすか?」
『・・・待ってる!』
 
私はずるい人間なのかもしれない
相手は私を好きってわかっていてこんなことを言うなんて。
 
 
『今日はありがと、いきなり泣いてごめんね。
 それに来てくれてありがとう、嬉しかった』
「いえいえ、オレでよかったらまた電話してください!
 すっとんでいきますから!」
 
二人で笑いあって公園を後にする。 
 
 
 
 
 
 
あと・・・7日。


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