謙也に彼女ができた、可愛い彼女だ。

その彼女は謙也の幼なじみらしく、家も近いそうだ。それを知ったのは最近で、何故今まで知ることができなかったのか、正直意味が分からないしそれを言ってくれなかった謙也に少し腹が立つ。だが、彼らが好きあってるのは事実であるから俺は何もできない訳だ。

ここまできたら正直に言おう、俺は謙也をとられるのが嫌だったのだ。周りから見たらただのクラスメイト、もしくはクラスメイトで親友同士と思われる関係だろうから、まさか俺が謙也をとられるのが嫌だなんて思っているやつらはいないと思う。俺の性格的にもだ。恐らくクラス全員「白石は普通に女の子が好きなやつ」と思ってるだろう。だが違うのだ。俺は謙也が好きになってしまったのだ。好きになってしまったものは仕方ない。だが、ここで少し言い訳をすると好きになったのが謙也だったというだけなのだ。別に全部の男を好きになる訳ではない、謙也だから好きになったのだ。例えば他のメンバーを好きになるか、と考えるとそうではないだろう。さらにこれから先、男ばかり見てしまうか、そう質問されても答えはノーだ。俺は普通に女性も好きになれるのだと思う。実際、たまーにクラスメイトの女子とか他のクラスの女子とか、可愛いと思うときもある。しかし、今俺は謙也一筋なのだ。


「なあ、謙也。俺、最近知ったんやけどな」
「おん、何や」
「自分、幼なじみの女の子と付き合い始めたらしいな」
「は!な、なんでしっとんねん!」
「いやあ、噂というかな…」


なんでしっとんねん、か。俺はお前の全部を知ってるつもりだったんだけどなあ(しかし謙也と幼なじみの女の子が付き合っているのは最近知ったことだ。さらに噂というのも嘘である。俺が何となあく観察してみたのだ)。例えば、謙也の好きなタイプ嫌いなタイプ、好きな動物好きな食べ物、そして基本的な事、身長体重誕生日。全部知ってるのだ。恐らく謙也が俺にばれてると気づいていないことも。それくらい謙也が好きになってしまったのだ。ついでに言っておくと、これを知れたのは謙也の家に遊びに行ったとき、些細な会話の最中俺のエクスタシーな技術によってだ。ネタではない。本気である。


「そ、そんで?」
「そんでってなんや?俺はなにもせえへんよ。謙也の彼女や、手ぇ出したりはせえへんよ。ていうか俺そないなやつやないで!」
「い、いやそういうことやないねん」
「じゃあ、何や」
「な、何というかな」
「はあ?訳分からんのやけど」


何が言いたいのか俺には全く分からないのだが、つまり何だ。俺が知ってはいけなかったということなか。濁す、ということは言いにくいということなのだろう。まあ、そりゃそうだ。謙也はあんな格好でも恐らく初めての彼女であるだろうし、初恋なんじゃないかと思う。それを友達に、俺みたいな親友ポジションのやつにばれてしまっては恥ずかしいだろう。


「ああ、大丈夫やで」
「な、何や」
「誰にも言わへんから」
「あ、や別に知られてもええねんて」
「じゃあ何やの」
「あんな、俺の言い方が悪かったんけど、」
「おん」
「出来れば、でええんや!もし何かあったら相談に乗ってくれたりせえへんかなあって」
「…」


そういうことか。このパターンでくるとは俺も予想できなかった。まあ、よく考えてみればあのヘタレ謙也だ。こんなパターンもありだったのだろう。しかし、ここで俺がイエス、と答えれば問題が生じるのだ。何故、俺が自分の好きなやつと幼なじみの女の子の恋を手伝わなければならないのか。俺が手伝ったことで、もし二人の仲が深くなってしまったら?そのまま結婚してしまったら?そう考えると俺はどうすればいいのか分からなくなってしまう。


「やっぱ無理、だよなあ」
「い、いや!そないなことあらへん!俺ら親友やろ」
「そ、そうかあ!」
「困ったら何でも聞いてや。俺が答えたる!」
「頼もしいわ!頼んだで!」


そんな笑顔で俺を見ないでほしい。裏があるなんて申し訳なくなってしまうではないか。俺だって好きなやつと他の女の子をもっとくっつけるために全力で力を貸そうなんて思えないのだ。きっと誰でもそうだろう。だが、出来るだけ協力したいという気もあるのだ。「親友」なのだから。

ああ、あとどれだけこの気持ちを味わえばいいのだろうか。好きなやつが他の誰かと付き合っている。そしてそれにアドバイスする。こんな苦痛なことがあるか。だけれど、俺は多分応援してしまうんだと思う。それも全部謙也が好きだからなのだ。好きなやつの願いはかなって欲しい。俺が幸せになれなくても謙也が幸せになれればそれでいいのだ。


20110420
白石が報われない

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