「一くん、今まで隠してたんだけど」

「ああ」

「僕、一くんのことが恋愛対象として好きなんだ」


今まで仲間だと思っていた男、総司に恋愛対象で好きだと言われた。どう反応すればいいのかも分からないし、そんなことを言われては、これからどう接したらいいか分からなくなる。ていうかだな、俺たちは男同士なわけで。


「は」

「驚くのも無理は無いよ。だって男同士だもんね」

「…」


分かってはいる、らしい。俺たちが男同士だから色々あれだということを。別に俺は男同士の恋愛を否定するわけではない。けれど、実際自分がとなるとどうだろう。俺は千鶴が好きなのだ。今まで誰にも言ってはいないが、本当は結構前から好きだ。それに、俺は男は好きになれない、と思う。副長は別だ、尊敬に値する男の方であって、恋愛対象では決してない。


「気持ち悪いとか思う?」

「い、いや…何というか」

「無理しないでいいんだよ、気持ち悪いなら言ってよ」


正直に言おう。別に気持ち悪くは無い。人には色々あるだろうし、その人の事をどうこう言う資格なんて俺にはあるわけがないのだ。だから、総司が俺の事を好きになっても、俺は断ることしかできない。千鶴が好きなんだからな。だが、今思い出してみると、確か総司も昔、「僕千鶴ちゃんが好きなんだよ」なんて言っていた気もする。


「あ、ああ。ひとつ、聞いていいか?」

「いいよ」

「前、千鶴が好きとか言ってたろう。それはどうしたんだ?」

「ああ、あれは本当」


本当?なら何故俺を好きだと、言ってくるのだろう。俺をからかっているのだろうか。それとも、本気で言っているのだろうか。


「なら、何故」

「だって好きになっちゃったものは仕方ないじゃない」

「そうか…だ、だがな!」

「うん」

「俺は女子が、ちっ、千鶴が好きなわけであって、総司のことは仲間だとしか思えない。だから、申し訳ないが、恋愛対象としては断ることしかできない。」

「へえ、一くん千鶴ちゃんのこと好きなんだーじゃあ敵同士だねえ」

「ということはつまり、あんたは俺も千鶴も恋愛対象として好きだ、ということか?」


普通に考えたらそうなるだろう。けれど、そのような恋愛はいかがなものだろう。


「は?何言ってるのさ、一くん。僕が好きなのは千鶴ちゃんだけだよ」

「あんたこそ何を言ってるんだ、」

「僕は今日を大切にしただけだよ。よく今日は何の日か考えてみなよね。一くんてからかいがいがあって面白いなあ」


何を言ってるんだ、と思ったのは一瞬で、次は何故自分は気がつくことができなかったのだろうと思いが自分のなかを駆け巡った。まさか、この俺が総司に騙されるとは思わなかった。悔しいが、もう騙されてしまった事実は消せないのだ。くそ、総司め!今まで千鶴が好きだということを隠していたのに。
この後、総司に行ってしまったことで隊内に広まってしまったということは言うまでもない。だたひとつ、千鶴にはばれていないということが唯一の救いだ。


20110401 あとがき
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