ついに俺がイジメを受ける日が来たようだ。2月3日だ。俺の大嫌いな日である。鬼は外、福は内。そんな下らぬことを言っている暇があるのなら、もっと役に立つことをしろと思う。だいたいな、鬼は外、福は内って何を言っているんだ。俺のような良い鬼、だっているはずだろう!なに、俺は良い鬼じゃないだと。そんなことを言えるのは今のうちだぞ。お前らの家に行って驚かせてやるからな。覚悟しておけ。

「千景さん、一人で何言ってるんですか?早くやりましょうよ!鬼は外!千景さんは外!」

「千鶴まで何を言っている。お前も鬼だろう」

「いえ!今日は私は人間役です。千景さんはいつも通り鬼でいいですよ!」

毎年思う。何故俺が毎年鬼役なのか。流石に千鶴を鬼役にすることは出来ないが、俺以外にいるだろう。天霧や不知火、あとはその辺にゴロゴロいるだろう。それなのにこの風間家のボスの俺が鬼役だと?納得いかん。が、千鶴の為なら鬼役だってやってやらないこともないと思ってしまう俺がいるのも事実で。

「千景さんは外ー!福は内ー!不知火さんと天霧さんはお家へどうぞ!」

「おっ、すまねえな。俺たちも千鶴側でいいのか?」

「すいません、千鶴さん」

「いえ!構いませんよ!さあ、千景さんを退治しましょう!」

「まさかこんな風に風間に仕返しできるとは思わなかったぜ!風間外ー!もうくんな!馬鹿頭領!」

「不知火…あとで覚えておけよ?天霧、お前も構えるなよ」

「「ごめんなさい」」

千鶴のそういう優しいところは嫌いじゃない。むしろ好きだが不知火や天霧にあのようにやられると流石にイライラはするだろう。だいたいいつまで続くのだ!もう30分はやっておるぞ。千鶴は今もまだ豆を投げているし、畳は豆だらけだし。最悪な行事だ。

「千鶴、もうそろそろ終わりにしろ」

「え、そうですか?じゃあ、最後にもう一度いいですか」

「それで最後にしろ」

「はい!じゃあいきますよ。鬼は内!福は内!ち、千景さんも内!今年も皆さんで仲良く過ごしましょう!千景さん今年もよろしくおねがいしますね」

「千鶴、お前流石だぜ…!これは涙もんだな」

「ええ、出来た娘さんです。風間も嬉しいでしょう」

最後になんてことだろうか。俺は最後まで千景さんは外なんて言われるのかと思っていたら、千景さんは内なんて言うではないか。嫁であるからそれくらいは同然だろうが、30分も千景さんは外なんて言われていたらもう正直どうでもよくなるというか、諦めるというか。しかし最後にこんな素晴らしいことがあったのだ。不知火と天霧が言うとおり千鶴はよくできた娘だと思う。最初にあんな風に無理やり嫁にしようとしていたのが恥ずかしいくらいに。

「千鶴、俺は別に嬉しくなんてないんだぞ?」

最愛の千鶴にこんな嬉しいことを言われるなら2月3日も悪くない。来年も再来年も、千鶴とそして不知火と天霧と、また豆まきをするのも悪くないだろう。


(何だ風間、今はやりのツンデレか?)
(何を言っているのです、今はまだそんな時代ではありませんよ)


20110208
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