俺は今、薄桜保育園で先生をしている。何故かというとだな…話すと長くなるのでやめておくことにしよう。今までの俺ならとっくにやめているのだが、何故ここまで続けられているかというと、この保育園には俺の天使、雪村千鶴がいるからだ。あいつに触れる奴がいたら俺が許さない、と言いたいところなのだが保育園という施設なのでそれは無理だろう。ほら、今も千鶴の周りには男どもが沢山いる。 「なあ!ちづるー!きょうおれんちきてあそぼうぜー!」 「へいすけくん!じゃあ、ままにきいてみるね!」 「おう!じゃあだいじょうぶだったらおれんちきてね!」 「わかった!」 何だと、今日あいつら遊ぶのか。俺も混ぜてくれ、なんて言えるわけがないだろう!こんなでも俺は先生であいつらは園児。年だって相当離れている。このことでどれだけもどかしく思ったことか。どうして俺は千鶴と同じ時に生まれなかったのか。両親を呪うくらいその運命を憎んだこともあった。が、今はもう諦めている。俺らしくはないのだが、これはもう仕方のないことなのだ。そんなことを千鶴の遠くで考えている時だった。また別の男が千鶴に話しかけている。 「ねえねえ、ちづるちゃん。おおきくなったらぼくとけっこんしようよ」 「んー、ちづるねえ、…とけっこんするんだー!」 「そいつはやめたほうがいいよ!ごくあくにんだよ!」 「そうなの…?じゃあそうじくんとけっこんするー」 「じゃあゆびきりでもしようか?」 「うん!」 何だ、あいつは沖田総司。何故俺の方を見る。しかも、話の内容からすると結婚がどうのと言っていたな。しかし、肝心なところが聞こえなかった。千鶴は誰と結婚するといったのか。もしかして、俺…な訳は無いだろうな。くそ、この運命を俺は憎むぞ。何で千鶴とあんなに離れているのだ。何度も年のことを考えただろう、ほんの数分前にも考えていた。もし、この世界に年齢操作ができる薬があったのなら、俺は迷わず使っているだろう。しかし、そんなものがあるはずもない。だから俺は悩んでいるのだ。そうだ、天霧に頼んだら作れたりしないものだろうか。あとで天霧に電話してみよう。そう思っていた時だった。三人目の男が口を開いた。 「ちづる、おれといっしょにあれにのろう」 「ん?ぶらんこ?いいよー!みんなもいっし「おれとふたりでのろう」 「うん?いいよ!いこー!」 斎藤一か。あいつも気をつけなければならぬ男だな。しかし、平助と総司とは少し違うような気もする。平助は保育園終了後の誘い、何をするのか分からぬ。そして、総司は結婚の話なんかをしている。それに比べて一はなんて純粋なのだろう。他の男は呼ばないにしろ、園児らしい遊び方をしている。こういうのは素直に嬉しいことだ。 俺も保育園の先生なんてものをしているからこんな思いをするようになったのだろうか。前まではこんなこと思いもしなかったのだ。それを考えると今の仕事はとても良いものなのだろう。千鶴の周りの男は気になるが、この仕事はそんなに悪くは無い。願わくば、千鶴と結婚…なのだが、そこまでいかなくてもいい。千鶴とこんな風にして毎日会うことができるなら俺はそれで満足できるだろう。今日も俺はここで一日を過ごすのだ。愛しの千鶴と一緒に。 (へいすけくん!きょうあそんでいいって!) (そうじくん!そうじくんともけっこんするけどかざませんせともけっこんする!) (はじめくん!あしたはいっしょにすべりだいやろーね!) 20110116 |