彼女と友達になってから結構経つ。だけど、未だにアドレスも交換できていない。こんな事では、いつまでたっても何も進まない。しかし、オレの力ではもうどうにもできない。せめて、一度でもこんな経験がオレにもあれば。

「あああ、どうしよ。どうすれば彼女とお近づきになれるかなあ」

「あれ、平助。どうしたの?何か悩んでるの?」

「総司!実は、」

へえ、なるほど。平助も可愛い所あるんだ、なんて余裕の笑みを見せる総司には若干イラッとする。でもそれが、経験者の余裕ってやつなんだろうな。くっそー、羨ましいぜ。

「そういう時はね、まずは」





というやり取りは、数日前の話で今日は総司から教わった恋愛講座の実行日なのである。

「まずは、相手との会話から、そしてどんどん連絡先交換の話に持っていく。そして、友達という理由を使ってアドレスの交換をする」

何度も何度も繰り返した、練習もした!多分大丈夫だ、と思いたい。でも待てよ、上手くいくのか。上手くいかなかったらどうしよう、オレなんか変な人になるんじゃ…。そんな不安が頭の中をグルグルグルグル。そんなとき、そんなことを全て吹き飛ばしてしまうような彼女の声がした。え、何この流れ!オレ最近運良すぎじゃねえ?

「藤堂、くんでいいのかな。お久しぶりです」

「あ!雪村さん。お久しぶりです!」

「最近はどう?体調とか。」

「全然問題ないですよ、見ての通り元気です」

「良かった!」

ああ、本当に可愛い。こんな普通の会話ができるだけでもオレはすごくうれしい。しかし、問題はここからだ。どうやって連絡先交換の話題に持っていくか。…あー!めんどくせえ!直球で行くしかない!

「あの!もしよければ…!」

「はい?」

「雪村さんの連絡先、教えて頂けませんか?」

言った…!オレ言ったよ、総司!しかし、恥ずかしくて上を向けない。ああ絶対オレ今顔赤い。

「…」

やべえ、かも?これはあまり良くない反応かもしれない。雪村さんは何も言わない。無理でもいいから、せめて一言ください。

「…か、構いませんよ。男の人と連絡先交換するなんて初めてなので恥ずかしくて」

恐る恐る上を向くと彼女の顔は真っ赤だった。緊張してたのは自分だけではなかった。少し安心した。

「じゃあ、えっと!よろしくお願いします!」

ここまで出来ればあとはもう自分の頑張りしだいである。彼女のためなら何でもするというくらいの気持ちで何事も頑張ろうと思う。そして彼女、千鶴を俺の彼女にするんだ!





「ここまでが千鶴との出会いです。」

「ふーん。結構どうでもいいかな。それより平助、千鶴ちゃんちょうだい」

「は!無理に決まってんじゃん!千鶴はオレの彼女なんですー!」

「へ、平助君!恥ずかしいよ…」

「ご、ごめん!」

「ていうかさあ、その出会いの話のあとはどうなったの?」

「えっと、メールするようになって、何度か遊びに行くようになって。それから色々あってオレが告白した」

「へえ。結構やるねえ。平助もそこまで出来るようになったんだ。ねえ、はじめくん?」

「ああ、そうだな。あの平助にしてはよくやったな。…それより、平助。千鶴を俺にくれないか」

「はじめくんまで!駄目に決まってんじゃん!ていうか、いたんだはじめくん」

「泣くぞ?ずっといただろ。なあ千鶴」

「あ、はい。はじめさんずっといましたよね、私しってますよ!」

「千鶴ちゃんて良い子だよねえ、初対面の時はびくびくしてたけどもうこんなに慣れたし。これからもよろしくー」

「こちらこそ!よろしくお願いします!」

「な!なに仲良くなってんの!やめて!まじやめて!」



(千鶴ちゃんはこの先どうなるかなー?)
(どうにもなんねーよ!)
(さあ、それはどうだろうな。)
(どうでしょう?)
(千鶴まで…!ばかやろ、なんて言えない!)


20110108
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