「いらっしゃいませ」

このお決まりの挨拶を言い始めてから、もう半年が経つ。正直言うともううんざりしてる。よくこのバイトをこんなに続けられたものだ、と思う。何せ自分は飽きっぽいのだ。このバイトも好奇心から始めた。金が欲しいっていうのもあったけれど、暇つぶしっていうのもあったと思う。部活はやってる。けれど、部活がない日に家にいると、親に勉強しろとか言われるだけだし、一人じゃむなしいだけだし。そんな色々な理由でバイトを始めたわけだ。こんな俺でも、何度やめたいと思ったことか。時給は安いし、店長は怖いし最悪。注意された時なんて、心の中で店長の悪口超言ってるし。うわ、俺心せまっ。

「あー早く終わんねえかな」

今は午後2時。今日は午前10時から夕方5時までの予定だ。朝は早くはないものの、昨日夜更かしをしたせいで、眠くて仕方がない。夜更かしの理由はもちろんゲームをしていたからである。そんな夜遅くにゲームやるならバイトやめて学校から帰ってからすぐやればいいじゃないってよく総司に言われるけど、それはちょっと何かなあ。と、バイト中に色々がんがえつつ、客も来ないし、少しサボってもばれないんじゃないか、と思っていた時だった。

「あの…」

は、
いつ入ってきたんだっけ。あ、もしかしてさっきオレがいらっしゃいませって言った時か。決まったことを決まったタイミングで言うだけだから記憶なんて曖昧なのである。

「あ!すいません!」

「いえ!構わないんです。大夫お疲れのようですけど…大丈夫ですか?」

「あ、はは。全然大丈夫ですよ、仕事ですから。」

お客さんに心配されるなんて、半年もこのバイトをしているヤツじゃないな、なんて一瞬思ったが、人間毎日調子がいいというわけではないので、そんな考えは頭の隅にやった。正直今の状況でそんなことはどうでもいいのだ。

「あ、えーと。お弁当温めますか?」

と、またこの決まり言葉を聞くため、そのお客さんを見た時だった。ドキリ、心臓が跳ねた、気がした。

「はい!お願いします。」

何故ドキッとしたかなんて自分でも分からない。これが恋というやつなのか?顔ではない、その人の全てにドキリとしたのだ。まさか、こんな風に恋に落ちるなんて。オレの青春はここから始まるのかもしれない、と思った。こんなことがあるからこのバイトはやめられない、なんてそんな訳はない。いつでもやめることだって出来る。けどやめないのは、彼女ができた時のお金の為かな!なんてな。そんなことが出来れば嬉しいけど、反面不安もあった。何への不安かなんて今はまだ分からない。願わくば、このお客さんと恋に落ちたい!そう、そして青春するんだ!


20110107
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