昨日、俺と千鶴は正式に付き合う事になった。事の成り行きは面倒だから話さないが、これも天霧のおかげであろうな。毎回感謝する。やはり、素直になるというのは難しいものであるという事を改めて実感した。だからあいつら沖田とか藤堂はよく素直になれたものだと思う。千鶴に好きだとか言っていたが、今や千鶴は俺のものだ。貴様らに渡す気など微塵もない。

と、それはよいとしてだ。
天霧に付き合い始めた男女はまずは一緒に帰ることから始めた方がいいでしょうと言われた故、昨日俺は千鶴と一緒に帰るという約束を交わしたわけだが。やはりこういう時はなんだかそわそわして落ち着かないものだ。約束の時間はもう過ぎているはずなのだが、千鶴は来ない。何か用事が出来たのかと教室に行ってみようかと思ったがやめておいた。もし何かあれば携帯に連絡があるだろう。もう少し待ってみるかと、ため息をついたときだった。


「風間先輩、すみません。帰りのホームルームが長引いてしまって…」

「いや、構わん。だがまあ、」

「はい?」

「いや、何でもない」

いきなり一日目にしてこの俺を待たせたからには覚悟はできているんだろうななんて言うのはいかんなと自分を戒める。まあ、長い付き合いであったら何も遠慮しないのだがな。

「さて、風間先輩!帰りましょう!」

「ああ。時に千鶴よ、どこか寄りたい場所はあるか?」

「え?いえ特にこれといっては」

「そうか。それなら今日はゆっくり散歩でもしながら帰りたい」

「あ、はい。構いませんよ、今日はこんなにいい天気ですし!」

別に、ち、千鶴と一緒に長くいたいなんて思ってないぞ。折角一緒に帰れるのだからな無駄な時間もいいかもしれない。いろいろ考えながら、いろいろ話しながらの帰り道も悪いものではないからな。

今日はいつもは天霧や不知火と帰っていた帰り道とはまた別の心地だった。
男三人での帰り道とはなんて華がないんだろうか。だがそっちにも別の楽しみがあって、俺は嫌いではなかった。いつも不知火が無駄な話をしていて、俺がその話に多少いらついて。そして天霧が仲介役となって、そんな毎日にだったが、男同士というのも悪いものではない。寧ろ男同士の話ができていいといったところだったか。

しかし、今は千鶴と俺二人である。
今まで女経験はあったが、千鶴のように俺から好きになるなど初めてなものだ。多少はこう内心そわそわしたりとか仕方のないことで。だからいつもと違う感じに戸惑っていた俺だったが…

「風間先輩、あの、」

「あ、ああ。どうした」

「私を好きだと言ってくれてありがとうございました。そ、その嬉しかったです」

なんて事を笑顔で言ってきたから。やはり俺の目に狂いはなかったなと思う。こんな可愛いやつに出会えた俺は幸せものだ。男同士の帰り道もいいが、かわいいかわいい俺の千鶴と帰る帰り道はもっといい。そんな帰り道がこれから続くと思うと、思わず頬が緩んでしまった。

この先、このままの毎日が続けばいいと思う。そんなことを願いながら俺たちは家路についた。


俺と千鶴と帰り道と


20091116

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