マムは懐かしそうに目を細めた
「あなたが私の事をマムって呼んでくれた事を忘れもしないわ…
本当に、本当に嬉しかった」
「マム…」
私はギュッとマムの手を握った
「神那、私に聞きたい事、あるでしょう?」
コクリと小さく頷いた
「兄さんは、このこと知ってたの?」
「神楽と神那を一緒に連れて帰ったのだけれど…あの子は変に感がいいから聞いてきたわ」
やっぱり、兄さんは知ってたんだ
私が本当の兄妹じゃないって事
「神那、本当にごめんなさい。いずれ分かる事だから私の口から言っておきたかったの」
「マム、私はマムの…」
子供…?そう聞きたいけど、言葉が出ない
「私の大事な子供よ、決まってるじゃない。血の繋がりなんて関係無いわ」
「……っ」
優しく微笑むマムの表情はいつもと変わらなくて
そっと抱き寄せられてマムの胸の中で私は声を出さずに泣いた
「ねぇ、神那…」
私が落ち着いた頃マムは私の頭を撫でながら口を開いた
「…ん?」
「神那だけにしか頼めないことがあるの」
「なあに?」
「神威と神楽のこと、あの二人がこのままだったら私…死んでも死にきれないわ
神那が大変な思いをすることもわかってるの…でも、あの二人の仲を取り持つことが出来るのはあなたしかいないの」
そっと顔をあげると眉を下げながら微笑んでいるマムと目があった
「ね、頼まれてくれないかしら…」
マムの言葉に私はコクりと頷いた
「うん、わかった…だから安心してね?」
私はこの時のマムの顔を一生忘れないだろう
大好きなマムの笑顔を胸に焼き付けるようにいつまでもその姿を見つめていた
マムはそれから1ヶ月後に息を引き取った
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