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「何読んでるの?」
千代子が声を掛けると彼は驚いた表情をした
「??…どうかしたの?」
「あ、いえ…」
千代子は再び同じ質問をした
「何読んでるの?」
「こころです」
「あぁ…夏目漱石の」
千代子がそう言うと彼は、はいと答えた
「本読むの好きなの?」
「はい」
「そっかぁ。私も結構本読むんだよ〜」
彼はまた少し驚いた表情をした
と言ってもそこまで表情の変化はないのだが
その顔を見た千代子はムっと頬を膨らました
「なぁに、その顔」
「あ、いえ…意外だなと思って」
「失礼だねぇ、君…こう見えて私読書が趣味なんだから。本は私の知らない事を沢山知ってるでしょう?だから好きなの」
「そうなんですか。…えっと」
そこで二人は気が付いた
お互いの名前を聞いていない事を
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