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「…此処は5年の教室だよ?」
思った事をそのまま口にする
卒業生は困ったように笑いながら言った
「千代子ちゃんに用があって来たんだ」
相手はどうやら千代子の事を知っているようだ
だが千代子は何故自分の事を知っているのか分からず首を傾げる
「どこかで話した事、ある?」
彼は首を横に振った
「僕が一方的に知ってるだけだから」
「でも、私に用があるって…」
千代子がそう言うと彼は若干頬を染めて言った
゛千代子ちゃんの事が好きです゛
彼が一瞬何を言っているのか千代子には理解が出来なかった
今まで全く接点が無かったはずなのにいきなりの告白
しかも初めての…
でも何故だか心は落ち着いている
不思議に思いながらも口を開く
「悪いけど、私好きな人がいるから…ごめんなさい」
彼は答えを知っていたのかそんなにショックな様子ではなかった
ただ気持ちを伝えたかっただけだ、と
それだけを言って彼は教室を出ていった
入れ違いで教室に紫原が入って来た
出ていった彼をじっと見た後千代子の所へ向かってくる
「ちょこちん、今の誰ー?」
「分かんない。名前聞くの忘れてた」
嘘は言っていない
実際彼の名前は聞いていない
そこで話が終わると千代子は思っていた
だが、紫原の追求はまだ続く
「何の話だった訳ー?」
その質問に一瞬言葉が詰まった
質問に答えるべきなのか迷っている千代子に気が付いた紫原
「答えたくないなら別に良いけどー」
口ではそう言っているが、明らかに声は不満を孕んでいる
「…………好きって」
「は?」
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