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「はい、あっくん。お疲れ様」
練習で汗をかいていた紫原に近づきタオルとドリンクを手渡す
「ちょこちん」
紫原はドリンクを受け取り口にする
「…甘い」
「ふふ、でしょー?先輩には内緒だけど、あっくんのだけ少し甘めに作ったのー」
昔からスポーツドリンクは甘めだった紫原のために千代子はこっそり作ったのだ
「やったー。ありがとーちょこちん」
嬉しそうに頬を緩めて休憩のため座り込んだ
千代子も同じようにしゃがみ紫原の汗をタオルで拭いてやる
「汗いっぱいかいてるからちゃんと拭くんだよー?私はまだ仕事があるから、練習頑張ってね?」
千代子の言葉に少々不機嫌になるが、仕事ならば仕方が無い
そう思い紫原も頑張るー、と言って千代子を送りだした。
もう全員にタオルとドリンクが行き渡ったかと周りを見渡すと見慣れた水色が見えた
千代子はそのまま近づき声を掛けた
「テッちゃん!」
「…茶野さん」
千代子がいた事に驚いたのか、いつも無表情の彼が少しだけ目を見開いていた
「テッちゃんもバスケ部に入るんだねぇ」
「はい。茶野さんはマネージャーなんですね」
「そうだよー」
いつも本を読んでいたから文系の部活に入るんだろうと思っていたから運動部に彼がいるのがなんだか新鮮で笑ってしまった
そこでふと千代子は気がついた
彼の手元にはまだタオルもドリンクも届いていない
「ごめん!まだドリンクとタオル無かったんだ!今取ってくるねぇ」
千代子はパタパタと走ってドリンクとタオルを取りに行った
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