入口の人が少なくなるまで二人で雑談をする事にした
「さっちゃんはどうしてマネージャーになったの?やっぱりバスケが好きだから?」
「あ、うん。それもあるんだけど…」
途中で口篭ったさつきを千代子は見上げた
「大ちゃん…私の幼馴染みがバスケバカなの。放っておくとどうなるか分からないから」
「そっかぁ…さっちゃんはその大ちゃんが大事な人なんだねぇ」
勿論、千代子が言ったのは色恋の意味ではなく兄弟を心配している表情に似ていると思ったからであった
「あ、違うよ!?大事って言うか、放ってけないって言うか…兎に角!!好きとかじゃないからね!?」
「あははー分かってるよ〜。表情がなんか違うなぁって思ったから」
「あ、そう言えばちょこちゃんには彼氏いたんだよね」
「うん、そうだよー。あっくんと私も幼馴染みなんだぁ」
「じゃあ、彼氏もバスケ部?」
「うん!本当は私もバスケ好きだからバスケ部に入部しても良かったんだけど…」
「どうして男子バスケ部のマネージャー希望にしたの?」
さつきは千代子に視線を向けた
「やっぱり私、あっくんがバスケをしているのを近くで見てるのが1番好きなんだぁ」
「ちょこちゃん…なんか」
「…どうかした?」
今の会話で何処かヘンなところがあっただろうか
「何て言うか、ちょこちゃん、彼氏の事を話している時はいつもと雰囲気が違うから」
「え?…そうかなぁ。やっぱり好きな人は特別なんだよ。私にはあっくん以外は考えられないもん」
「そうなんだ…」
「多分ねー。まぁ好きになった人は自分にとってそれだけ特別って事だよ」
「私、好きな人いないからなぁ…」
さつきは小さく零した
「うーん…まぁ、そういうのって早ければいいって訳じゃないから焦る必要無いと思うよ〜」
「…ちょこちゃん、何て言うか恋の達人みたい!」
「達人??」
千代子は実際恋愛にはとことん疎くストレートに言わないと伝わらない事が多いがそれは当の本人の事であり、客観的に見る事は得意
そのため、千代子のことを好きになる人は苦労し、紫原はほっとしているという事は知るはずもない
「私、好きな人が出来たらちょこちゃんに直ぐに伝えるね!!その時はアドバイス頂戴!」
「あははー私なんかで良ければ」
やっと人が減ったため入口で仮入部の手続きをしてさつきと別れた
そして待っているだろう紫原のところへと急ぎ、見学をしに体育館へ向った
(あっくーん!)
(あ、ちょこちん。遅かったねー)
(ごめんね、さっちゃんと話してたー)
(へえー)
(私ね、達人なんだって)
(達人??なんの?)
(恋愛の!)
(……へぇ)
(凄いでしょ〜)
(…………うん)
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