×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -




私の個性を聞くとみんな一様に顔を強ばらせ視線を逸らす

あまりにも同じ反応過ぎて少し面白い
誰彼見ていったらこっちの体が持たない
まぁ、自分の心の中を見られていい気持ちはしないのは分かる

だからこの個性は対人には極力使いたくは無いのだ

「……」

もちろん例外はあるけれど

外出先、相澤さんと買い物に出かけていた日のこと
ちょっとトイレに行ってくる
そう言われて店の中を少し見て回ってくることを伝えておいた

そこまでは良かった
だが目の前の厳つい男は何故か私をじっとみたまま動かない

「おい。嬢ちゃん」

多分この嬢ちゃんは私の事だろう
顔を上げ視線を向ける
知り合いの刑事でもない
まぁ、私のことを知っていたらまず声はかけない

「何でしょうか」

じっと見つめる
私は何かしただろうか
しかしこの男に見覚えは無い
見覚えが無いという事は私はこの男の事を知らないと言うことだ

「ちょっと付き合ってくんねぇか」

「待っている人がいるので」

「まぁそう言うなよ」

私に1歩近付き肩に手を乗せた
ぞわりと気持ち悪い感じがした
なんだ、これは

この男の卑下た笑み
背筋に冷水を流されたかのような感覚
国語の教科書の小説の一節で見た事がある
それと同じ間隔を自分は体験している

…面白い
これはどういう感情だっただろうか
よく分からないけれど見知らぬ厳つい男には感謝だ

「ねぇ、素敵な殿方、貴方の個性は何ですか?」

私の言葉に男は更に笑みを深くした
下品な笑い方だなとおもった

「俺の個性はなぁ、他人の感情を殺す個性だ」

へぇ
私と同じ洗脳系の個性
でも、私の方が上だ
男の目を見つめる

流れ込んできたのは邪悪な感情
私を連れ去って何かするつもりか
この男の個性発動条件はなんだろう
私に触れても反応はない
目を合わせて返事をしても私の体に変化はない

そういえばさっき、感情を殺すと言っていた

「大変申し訳ないですが、私にその個性は効かない様です」

「はぁ?!」

「だって、私には感情が無いに等しいですから」

「何言ってんだ!そんな人間いるわけねぇだろ!!」

多分男は私に個性を使ってる
でも、私になんの変化もない

「個性使ってんだろ!」

「使ってませんよ、公の場で個性の使用は禁止されているのでは?」

男が大声を出したせいで周りがざわつき始めた
そろそろ相澤さんも戻ってくるだろう

「調子に乗りやがって、この糞ガキ!」

調子にのる?
私がいつ調子に乗ったのだ
この男、意味が分からない

「おい」

聞き慣れた声がした
だけどいつもより少し声が低い

「相澤さん」

どうしたのだろう
多分、これは怒ってる?
私が勝手に知らない男と話して居たからだろうか
それともこの男に加担して何かをすると思ったとか

そんな事をするつもりなかったのだが

「そいつの手を離せ」

相澤さんは私の肩を掴んでいる男の手を掴んだ
力が強かったのか男は激しく顔を歪めた
そうか、痛い時はこういう顔をするのか

男と相澤さんのやり取りをどこか他人事に観察していた

「多分ですけど、この男の人私に個性をかけて悪巧みをするつもりだったんだと思います。でも私にはこの人の個性、効かなかったみたいです」

一応状況だけは伝えておかないと私までまた警察に戻されかねない

「……そうか」

相澤さんはそれだけ言うと騒ぎを駆けつけてきた警備員に男を引渡していた

「悪かったな、俺が離れたせいで」

意味がわからなかった

「相澤さんは悪くないですよ、あの人のおかげで分かったことがあります」

相澤さんが私の方を見た

「あの人、他人の感情を殺す個性らしいですよ。同じ洗脳系の個性。でも私には感情が無いに等しいから効果なかったみたいです。私にちゃんとした感情があったら良かったのにって少し思いました。」

私の言葉に相澤さんは私の目をじっと見ながら聞いていた
また、変な顔をしていた
思えば私はこの人のことをいつもこんな顔にさせている

「でも、多分ですけど私、今日わかったことがあるんですよ。あの男が私の肩に手を置いている時冷水を背中に流されたような感じがしたんです。これは多分焦っていたのかなって。こんな感覚あまり感じなかったので面白かったです。」

私でも焦ったりするんだな、と
そう伝えると相澤さんは顔を顰めた
その後私の頭をくしゃくしゃ撫でた

「もっと早く来れれば良かったな。済まなかった」

「変な相澤さん。私別に何も思ってません」

「こんな感情をさせるためにここへ連れてきたんじゃない」

「でも、痛い時はああやって顔を顰めるのかとか、私の知らない事がわかったので良かったです」

あともう1つわかったことがある

「私、相澤さんに頭をくしゃくしゃされるの落ち着きます」

これはなんという感情だろうか





prev * 17/44 * next





TOP