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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「ちょっとトイレ行ってくる」

「おー、いってらー」


爆豪とお茶子の個人戦が終わり、席を立つ
誰にともなく放った言葉に瀬呂が返事をした

別にトイレに行きたかった訳ではなくて、気分を変えたかった


◇◇


何処か行く目的がある訳もなく、取り敢えず口に出したトイレへと向かう

皆体育祭に夢中だからか、客席から続く道は殆ど人が居なかった
女子トイレには入らず、そのまま洗面所で手を洗う
ちらりと目線を前に向けるとじっとこちらを見る自分の顔
何の変哲もない、目立つ特徴のない顔
どちらかと言うと父親に似ていると言われる事が多かった顔立ち
母に少し似ていれば父は気休めだとしても私を見て母の面影を感じたのだろうか

今更何を考えているのか
無意味な事ばかり頭に浮かんでくる

蛇口から流れる水を呆然と見る

数分はそうしていただろうか、いつまでもそうしているわけにも行かないため客席に戻らなければ

キュッと蛇口を締めて女子トイレから出る

ハンカチで手を拭いていて前をあまり見ていなかったせいで誰かとぶつかってしまった


「っわ」

倒れるかと思ったがふらついた身体を支えるように腕を掴まれた


「む…君は」

「…?」


私なんかよりも何倍も大きい手が腕を掴んでいる
疑問に思い顔を上げるとそこに居たのは炎を纏った大男だった
この人は確か…


「…エンデヴァー」

「確か、桧山かなめだったか」


エンデヴァーとは直接会ったことは無い
だが、相手は私のことを知っている様だ

相澤さん経由で知ってるのだろうか


「イレイザーが面倒を見ているらしいな」

「はい」

「雄英でおかしな真似はするなよ」

「…おかしな真似」


エンデヴァーの言葉を反芻する


「おかしな真似って言うと…例えば、どんな事ですかね」

別に私はこの学校にいる人たちに危害を加えようとした事は無い
した所で私にメリットは無いし


「…君の父親にした事を他の奴らにする事は許さん、そもそも貴様がここにいること自体が「そんな事しないですよ」…何?」

エンデヴァーの言いたいことが分かり口を挟む


「そんな事しても私にメリットは無いです」


エンデヴァーの目が段々と鋭くなって行く様を見て、これが普通の反応だと思った
今まで周りにいた人達がおかしかったのだ

「私がしたのは、確かに許されない事だとは思います。でも、私はあの日以降誰にもしてない」

「……」

「貴方が息子さんの事を自分の分身のように育ててるのは知ってます。でも、それは貴方の自己満足で、エゴだ。子どもは親の供え物じゃない」

だから子"供"とは書かなくなり子"ども"と書かれることになったのだと、新聞で読んだ


「ぶつかったのは、すみませんでした。それじゃ、私はこれで」


何も言い返さないエンデヴァーの手を自分の腕から離し軽く会釈をしてその場を離れた


私の罪は、私が1番よく知っている
他人から言われるまでも無い

でも、あれが普通の反応なんだ
誰だって自分を含め周りの人に危害を加えるかもしれない危険人物をそばに置きたくは無いし警戒するのはわかる
当然の反応だ


頭がガンガンする
色々と考えたせいだろうか

馬鹿みたいだ
最近自分の周りの人達から脅えた様な反応がない事で勘違いしていた

私は所詮母を助けられず、父を廃人にした
そして、母を刺した男を殺した人殺しだ





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