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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




雄英体育祭が間近に迫っていた
私は何をしているかと言うと筋トレだった
体力が全くない訳では無いけれど多分ほかのクラスメイトたちと比べると筋力はそこまで多くない
持久力はある方だが、瞬発力に欠ける

相澤さんにお願いしてトレーニングルームを貸してもらう許可を得て筋トレをする
腹筋、背筋、懸垂など様々なトレーニングを行う
勿論家でも軽い筋トレ道具は揃えているがここは充実しているのだ

相澤さんの仕事が終わるまで続けることにした
ほかのクラスメイト達も同様に各々の訓練をしているのだろう

持久力も付けないといけない
私は戦闘向きではない
だからという訳では無いけれど努力はしないといけないだろう
1-Aが初戦で落脱するのなんて洒落にならない

と言うより多分そんな事になったら周りの人達に何を言われることやら

懸垂をする鉄棒に足をかけ腹筋をする
これは意外といい
ただ頭に血が上るのが難点だ

自分のいつも見ている世界とは逆なのがなんだか面白い
ぼーっとしていると逆さまの世界の端に相澤さんの姿が見えた
呆れた顔をしている

「仕事はもう終わったんですか?」

「あぁ」

懸垂をしていた棒から足を外しマットの上に降りる

「もういいのか」

「はい。帰ってからも筋トレはできますから」

タオルで汗を拭い相澤さんに近づく
相変わらず目の充血は酷いな

「私、体育祭に、出ても良いんですか?」

「そりゃクラス全員に出る資格はあるだろ」

「そうですか」

まぁ、洗脳系の個性である私に出来ることなんて限られてるけど

「初戦は突破できるように頑張ってみます」

私がそう言うと相澤さんは私の頭をクシャりと撫でた

「帰りましょうか、今日の夜ご飯は魚にしましょう」

「そうだな」

この人はどうしてこんなに他人に優しくなれるんだろう
相澤さんのマンションの近くにあるスーパーに寄って鮮魚コーナーで足を止める

「相澤さんはなんのお魚が好きですか?」

「いや、特には」

「まぁ、ですよね」

食に関して頓着の無い相澤さんに聞くのは間違いだった

「煮付けがいいとか、焼くだけでいいとか、ムニエルとかなんか色々あるじゃないですか」

私は料理が苦手だからムニエルと言われても出来るか分からないけれど

「じゃあこれ」

そう言って相澤さんがカゴに入れたのはアジの開きだった

「焼くだけで簡単だろ」

「…そうですね」

この人に私は料理が苦手だと伝えたことがあっただろうか
簡単な料理しか出した事がないから、もしかしたらそこで料理が得意では無いことを察したのかもしれない

「明日のためにも早く休んだ方がいい」

「はい」

私の深読みし過ぎだっただろうか?
まぁ、今夜の料理は手間がかからなくて良かった

簡単に作り終えた料理をテーブルに並べて相澤さんと一緒に食事にする
いつも会話は少ないから特に何も思わない

「相澤さん」

私が声をかけると視線をちらりと私の方に向けた
骨はほとんど私が取り分けたから食べにくさはないと思う

「私は多分…最後までは残らないと思います」

上を目指している人とそうでない者
その差は大きく出てくるだろう

「上を目指していない私が、ここに居ていいのかっていつも思います。ヒーローになりたくて、それで無理だった人は普通科に行ってる人もいるんですよね」

放課後、普通科の人が宣戦布告をしに来ていたのを思い出す
彼の個性がどういうものなのかは分からないけれど少なくともきっと実技の入試では不利な個性だったのでは無いだろうか

「私は監視の目的もあるんでしょうけど、なんか…」

「お前が罪悪感を感じる必要は無い。確かに上を目指すものとの差はある。でもお前はまだその段階に居ない」

「…はい」

「かなめが目指す物がわかった時に、力を発揮すればいいんだよ」

「……相澤さんは、どうして私にそんなに甘いんですか」

この人はいつも厳しいのに、いつだって私には優しくする
分からない
私に優しくしてもなんのメリットも無いのに
何のために優しくするんだろう

「俺は確かにお前のことを監視する役目がある。けどな、お前の保護者でもあるんだ」

「はい」

「お前のしたい事、やってみたい事を見つけてやりたいと思ってるんだよ」

彼の言葉はやっぱりいつも優しい
そして、私にはとても眩しかった





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