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相澤さんの家に引き取られたのは中学生3年生の春だった
私は1度見たものは忘れない
記憶だって写真のように思い出せる
写真で見えない部分も全てだ
例えばジュースのグラスに着いた水滴の数まで数えられるほど鮮明に覚えている

これは別に個性ではない
生まれた時からそうだった
サヴァン症候群、と言われるものだろうと医者から言われた
別に日常生活を送る上で何も問題は無い
何も無ければの話だ
何かあった時は良い意味でも悪い意味でも忘れられない
これは幸せなことだろうか

私はそうは思わない

閑話休題

1度見たものは忘れないため教科書も配布された時に全て時間つぶしで見てしまったため全て覚えている
義務教育であるため特に学校に行く必要もなかった
義務だから行くべきなのだろうが、生憎行かなくても卒業することが出来てしまうのが義務教育でもある

今までは外に出れるという名目で学校に行っていたが相澤さんに引き取られた後私は引っ越したのだ
編入手続きも面倒で、勉学には特に問題は無いから行かないと伝えるとなんとも言えない表情をされた

相澤さんがいる時は外に出てもいいと言われた
多忙な人だからほとんどいることは無いけれど
仕事の時は家にいるように、何かあったら連絡するようにとスマートフォンというものを渡された

使い方は緑のマークの物と電話方法だけ教えて貰った
あとは自分で触って覚えろとも

教師をしている相澤さんは平日は仕事で家にいなかった
だからいい時間つぶしになった
よく分からなかったが説明書を読みながら操作を覚えた

パズルみたいだった
面白いかはよくわかんない

あと、相澤さんは睡眠欲求が人より強いのか食事に対して無頓着だった
冷蔵庫の中はゼリー飲料や栄養ドリンクが殆どだった
私は特に拘りはなかった為それでいいと伝えたが成長期にはするもんじゃないとよく分からないことを言われた

休みの日には買い物に行って食材を買ったりした
相澤さんの料理は手間のかからないものが多かったが不思議と監禁されていた時の食事よりは暖かく感じた

スーパーマーケットで買い物かごを持つ私とお菓子コーナーの前を通った際の事だった
その時に相澤さんが甘いものは好きかと聞いてきたのだ

私は食べれる物ならなんでもと答えたらまた変な顔をされた

何故か適当にお菓子をポイポイと買い物かごに入れてお会計をしていた
相澤さんはお菓子が好きなのかと聞いたら好きじゃないと言っていた
何で好きじゃないものを買ったんだろう
相澤さんはやっぱり変わっていた

「相澤さん」

「何だ」

「お菓子、食べないんですか」

相澤さんが家から帰ってきてお弁当を二人で食べている時に聞いてみた

「好きじゃないって言っただろ」

「じゃあなんで買ったんですか?」

「お前みたいな年頃はこういうのが好きらしいぞ」

「…そうなんですか」

よく分からない
私は食べたことないから
お菓子なんて何時食べたんだったっけ
覚えてないな
小さい頃に食べたが味迄は流石に思い出せない

「賞味期限もあるから暇な時でも食っとけ」

「はぁ」

今まで所謂お菓子などの嗜好品は配給されなかったからどんな味がするんだろうと不思議な気持ちがした





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