分からない事だらけな私でもそのまま時間は進んでいくし入学の話も進んでいった
相澤さんに雄英高校へと連れていかれそして雄英高校の校長と会った
ネズミなのかなんなのかよくは分からないけど相澤さんの態度から本当に校長なのだということは分かった
「君はヒーローになりたいかい?」
「…私はヒーローになりたいと思ってません」
「みんなが憧れる職業なのに?」
「そのみんなが私の中にあてはまらないんだと思います。自分の気持ちがわからないから」
「でも、ヒーローになりたいとは思ってないだろう?」
「はい」
「じゃあ、何になりたい?」
つぶらな瞳が私を見ている
私の目を見て話してくれたのはこの人で2人目だった
人と換算していいのかよく分からないけれど
「わかりません」
私は小学生のあの頃から言われ続けていたものがまだ見つけられないでいた
「わからない?」
「はい、私は自分がどうしたいのかも何になりたいのかもわからないです」
「そうかい」
私の答えに満足したのか、していないのか
校長は湯呑みを持ち上げて緑茶を啜った
「じゃあ、取り敢えずヒーロー科でヒーローを目指してみないかい?」
「取り敢えず?」
「ああ、色々な経験をして行く事で目標が見えてくるかもしれない。もしヒーローになりたくないのであればそれはそれでいいと思うよ」
「私みたいな生半可な気持ちでいる人間が本気でヒーローになろうとしている人の中に入っていいんですか」
それは周りの人たちに迷惑なことじゃないだろうか
全力でこの高校に入ろうと頑張ってヒーロー科に入学した人達にとって邪魔になるはずだ
「全員が全員どんなヒーローになりたいかを明確にしている生徒たちは少ないと思うよ。1年生なんかは特にね。憧れのヒーローはいるだろうけどそれに近づけるかどうかはわからない。挫折してしまう事もあるだろう」
「そういうもの、ですか」
「そういうものさ!」
校長の言っていることは難しい
挫折してもいいのだろうか
「わからないです」
「本当に嫌だったらいいんだよ」
「嫌、なんでしょうか?」
「僕は君じゃないから分からないな」
その通りだと思った
自分で分からない事を他人に聞いてもわかるわけが無い
自分の思いも自分で見れたら良いのにと思った
私はわからないことばかりだ
「ヒーロー科に入学したら、変わりますかね」
「僕は変わって欲しいと思うよ」
「そうですか」
私がそう言うと満足そうに目を細めていた
ここにいる人達はわからない人ばかりだ
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