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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




「かなめ、お前なにかしたいことはないのか」

ぼーっとソファに座りながら教科書を見ていた時相澤さんが聞いてきた
今日は休みらしい

「したいこと?」

「テレビを見たい、本を読みたい、ゲームをしたい何でもあるだろ」

自分が何かを進んでするという事は勉強以外に無かった
私とちゃんと目を見て話してくれる人はこの人しかいない
私のことを知っている人は決まって目をそらすのだ

でも、この人は違った
ちゃんと、私の目を見て話してくれる人

「テレビを見てもよく分からない。ニュースを見ると敵が悪さをしたとかそんなことばかり。面白いバラエティを見ても私にはわからない。これが面白いんだなって思うだけ。本は何をよんだらいいのか分からない。自分で決めるのが難しいの。沢山ある中からそのうちの一つを見つけられない。ゲームも一緒」

「出かけるか」

「……?」


脈絡の無さに首を傾げた
しかし、相澤さんは決めたらしく私に着替えてこいと言った

私は相澤さんと一緒に住むことになった日に買った白いTシャツとデニムパンツを履いてリビングに向かった

そのまま相澤さんは車に乗り私をショッピングモールへと連れていった
ここは本屋もCDショップもゲームも売っているらしい

「今から1時間の間にお前がやりたいことを見つけてみろ。金なら気にしなくていい。お前の貯金から出す」

よく分からないけど、この中から何か一つを選べということらしい
お金に関しては前から自分のものを使って欲しいと言っていたのを覚えていたんだろう

「…わかりました、でも私は物を知らないので相澤さんも来てください。迷ったら連絡手段が無いので」

私の後を少し後ろから着いてくる形で相澤さんは来てくれた
CDを見ても自分はテレビでしか聞いたことが無いから誰が何を歌っているのか知らない
CMで聴いた曲が好きなのかも分からない

結局CDショップでは何も見つけられなかった

本屋では小説と漫画、絵本、参考書など色々なものがあった
恋愛小説はよく分からなかった
ミステリーもあまり興味が無い
ファンタジーな世界は凄いけど想像力に乏しいから頭がこんがらがりそうだ

絵本のコーナーへ向かってみた
そこには親子が多くて、みんなにこにこしていた
私だけが何だか場違いな気がして息が苦しくなった

よく分からないわたしだったけど、この空間は好きじゃないという事が分かった

この空気は嫌いだった

「相澤さん、ゲームコーナーに行きましょう」

ゲームコーナーは違うフロアな為、相澤さんに案内してもらう
色んなゲームがあった
ファミリー向けのゲームやらバトル物、ロールプレイングなど

ここでもやっぱり何も見つけられないのだろう
そう思って相澤さんに声をかけようとした時に目に入ったのはゲームのパッケージだった

綺麗な色合いをしていて華やかな衣装を身にまとった女の子の周りに数人の男の子達がいる

「これ」

私は相澤さんにそのパッケージを手に取って見せた

「これか?」

「これはなんのゲームですか?」

「…アドベンチャーゲームだろうな」

「アドベンチャー?」

「自分がゲームをしていく中で色々選択肢が出て来る。それで話が変わってくるんだよ」

「選択肢」

色々な選択肢を何度もやり直すことが出来るのか、このゲームは
人生ではやり直しがきかないがこの中だけは何度でもやり直せる

「相澤さん、私これが欲しいです」

「…1時間、過ぎたけどな」

私がそう言うと相澤さんは少し困った様な顔をしていた
でも、嫌そうではなかった

その日から私はアドベンチャーゲームをすることが多くがなった
楽しいかは分からないけど興味深かった

これは好き、なんだろうか

やっぱりまだよく分からなかった





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