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相澤消太という人は不思議な人だった
私の置かれているこの環境に政府へ抗議したらしい
何故そんなことをするのか分からなかった

彼にとってメリットなんてひとつも無いから
ヒーローになる人はそんな人ばかりなのだろうか

その後私はお目付け役という名目で相澤消太の家に間借りする事となった
警察からの監視は一切無くなった
玄関のドアには普通にドアノブが内側にもある
部屋のどこにも監視カメラは無かった

あるのは出入口となるロビーとエレベーターの中だけだった

どうして、と私が聞いても彼は答えてくれなかった
ただ分かるのは私にとって彼は悪い人ではないということだけだ

私は1人で過ごしていたから誰かとご飯を食べることなんて両親がいた時しか覚えがないし、料理なんて家庭科の授業で習った単純なものしか作ったことは無い
スーパーやショッピングモールなどに行ったことも殆どない
彼は必要な衣類を買い与えてくれた

適当な衣類に適当な日用品を買った
何が良くて何が悪いのか分からなかった
何より、情報がなかったからどうするのが正解なのか理解できないのだ

長い間警察のお世話になっていたし、衣類や食事も配給されていた
自分の好みのものなんてなかったし、空腹であれば美味しくなくても食べる
勉学に必要なものは伝えたら警備の人が届けてくれたから外出の必要性も無かった

楽しいと言う気持ちがわからない
嬉しいという気持ちがわからない
悔しいという気持ちがわからない
悲しいという気持ちがわからない
腹が立つという気持ちがわからない
苦しいという気持ちがわからない


私は、分からない事だらけだった


欠陥品だと思った

何も感じない、何も分からないのだ
怪我をすれば痛いと思う
でも、悲しいとは思わなかった
辛いとも感じなかった

ただそこに痛みを感じる、それだけだった

その事を1度相澤さんに伝えて見た事がある
彼はやっぱり目を丸くしてそして怪訝そうな顔をした

「欠陥品じゃない」

「そうでしょうか」

「少なくとも俺はそう思うよ」

「何も感じないのに?」

「何も感じない訳じゃなくてお前は人との交流が少なすぎるから経験がないんだよ」

「…経験」

「何事も経験しないと得られない」

「…相澤さん、先生みたい」

「みたい、じゃなくて先生だ」

そう言って相澤さんは私の頭をくしゃくしゃした
彼は不思議な人だった





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