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校長から今年、特例である人物を特別枠として入学させるとのお達しがあった

自分が教師に務めてから、そして在学中でも聞いたことが無い事例だった

桧山かなめ

それがその人物の名前だった
ある事件の渦中にいたが表立って騒がれた事件ではなかった
ニュースにはなったが詳細は明らかにされなかったものだっはず

渡された資料を確認する
写真の中に写っているのはまだあどけない少女だった

彼女の個性は対象の深層心理まで見てしまうことが出来るという洗脳タイプの個性の中でも特殊なものであることは明白だった

直接会うために手続きを行い刑事と共に訪れた場所はとてもでは無いが中学生の子供が住むような場所ではなかった

厳重にされた建物
高い柵に分厚い門
監視カメラがあちこちにあった

刑事の案内でエレベーターに乗る
最上階では無いが飛び降りることは決してできない高さ

彼女が住んでいるであろう階に着くがすぐには開かない
暗証番号を入力してからエレベーターの扉が開いた

そしてたどり着いた部屋はシンプルなドアだった

刑事がドアをノックする
返事はないが隣の刑事に焦りはない
多分いつもの事なのだろう

返事を待たずにドアを開けるとそこには写真より少しだけ成長した少女だった

「……」

少女、桧山かなめはただ見つめるだけで何も言葉を発しなかった

「……では、お話が終わりましたらドアを3回ノックしてください」

耳打ちする刑事に軽く頷くとそそくさと出て行った
ドアが閉まったところを確認して目を疑った
内側にドアノブが無い

確かに彼女の個性は危険因子かもしれないがこれはあまりにも…

俺の考えとは他所に慣れな様子で部屋の奥へと向かって歩く後を追った

「貴方は私を殺しますか?」

部屋の中に入り振り返った彼女はただ虚ろな目をして俺に問うた
何故、この少女はこんな目をしているのか
この環境に何も思わないのか
分からなかった
このまだ、大人でもない少女の考えが

「何故、そう思う」

「…私は待ってるんです」

「待ってる?」

「そう、私の死に場所を」

口元だけを上げた笑み
こんな笑い方をする子供を見たことがあっただろうか

「…この窓少ししか開かないんですよ。飛び降りたりしないのに、おかしいと思いませんか?どこかに逃げようとも思わないのに、出られるのは学校の時だけ。家の中もトイレとシャワー室以外全部カメラがついてるんですよ」

そう言って天井の角を指さした

「カメラでさえも壊せる私を監視してるんですよ。ずぅと。多分私がここでカメラを壊せば外に待ってる刑事さんが飛んでくるんでしょうね」

彼女の声は不思議な音をしていた
なんの感情もない、喜怒哀楽がひとつも無い
この立場を甘んじて受け入れている

「そんな事するつもりないだろ」

「無いですよ。だってメリットがないですから」

また、変な笑い方をしていた

「そういえばお話があるんでしたね」

この少女が少しでも希望が持てるようになれたらいいのにと柄にもなく思ってしまうほどに桧山かなめは危なかった



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