×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
花束に苦笑い

及川side

彼女がこの前描きあげた作品がまた賞をとった
描き終えたら俺にも見せてくれると言ってくれた彼女は、ちゃんと約束を守ってくれた

完成を見せてもらって、やっぱり俺は彼女の描いた絵が好きだと思った
今回は風景画で、山の小川を描いていた
流れている小川は本物のように煌めいていて魚が今にも飛び出してきそうなほど鮮明だった

そしてわかった事は彼女は絵を褒められるととても嬉しそうに笑うんだ
その時の笑顔は作り笑いでも苦笑いでもなく自然なものだった

俺は彼女になにかしたくていろいろ考えた結果花を贈ることにした
彼女は自然の物が好きみたいだしアクセサリーとかを贈られるよりも花の方が受け取ってもらえると思った

いつもの様に美術室まで足を運びドアを開ける
そこにはいつもと変わらず彼女はそこにいたが、少しだけいつもとは違った
いつもならキャンパスに向かって筆を乗せているのに、今日は真っ白なキャンパスをじっと見つめていた
ドアが開いた音に気がついた彼女はこっちを振り返った

「……及川先輩」
「やっほー、彩華ちゃん」
「こんにちは」
「どうしたの?今日は描いていないみたいだけど」

俺がそう指摘すると彼女はあぁ、と頷き返した

「今、何を描こうか悩んでいるんです。次の出展までにはまだまだ余裕があるので時間いっぱい悩もうと思って」
「そっか」
「それで?及川先輩は一体どうされたんですか?」

今日は絵を描くわけじゃないので暇ですよ、と彼女は冗談っぽく言った
俺は背中に隠してあった花束を少しだけギュッと握り締めて彼女の前まで歩いて行った

「彩華ちゃんに、これを貰って欲しくて」
「……はぃ?」

差し出した花束を見て彼女は怪訝そうな顔をした
一体何のために花束を贈られたのか理解していない様だった

「この前見せてくれた絵、凄かったから……あ、彩華ちゃんの作品は全部凄いんだけど!見せてもらえて嬉しかったから、そのお礼!」
「…はぁ」

差し出された花束を受け取って彼女は苦笑いを浮かべた

あれ、喜んでくれると思ったのに…
なんだか反応がいまいちだ

「…及川先輩ってやっぱり外国の血が流れてるんじゃないですか?」
「えぇ?流れてないよ、俺の両親日本人だよ。勿論じーちゃんばーちゃんも」
「…そうなんですか。でも今どき花束なんて送りますか?高校生が」
「ぅ、気に入らなかった?」

俺がそう言うと彼女は手に持っている花束を顔に近づけ目を細めた

「正直、花束を贈られるとは思わず若干引いてしまいましたが…花には何の罪もありません。それに、この花とてもいい香りがします」
「っ、」
「ありがとうございます、及川先輩」

彼女の笑顔にドキリとした
あぁ、やっぱり俺は彼女が好きだ