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告白しても口癖だと思われる

「彩華ちゃん、俺彩華ちゃんが好きだよ」
「…はぁ、」

昼休み、未完成な絵を描き上げるため美術室で素早く昼食をとりキャンパスに筆を乗せようとした時、予期せぬ来客が現れた

彼は片手に弁当箱が入っているだろう袋と飲み物そしてパンを抱え美術室へ入ってきた
そして何も言わず当然の様に私の隣の席へやってきた
そして、冒頭に至る

「……あの、意味がわからないのですが」
「わからないの?」
「はぁ、突然そのようなことを言われましても」
「えぇ、突然じゃないんだけどなぁ」

そう言ってへらりと笑う彼に少しイラついた
こっちは今から集中して取り組もうとしているのに邪魔をしないで欲しい

「……及川先輩ってリップサービスが染み付いてしまっているんですね」
「え?」
「私の様な平凡な女子にまでそんなことを言うとは、吃驚です」
「…全然驚いているようには見えないけどね」
「そうですか」

私はそれだけ言うとまだ何かを喋っている彼を無視して作業に取り組むことにした
彼に構っていると時間がいくらあっても足りない

背を向けて私が集中し出すともう何を言っても無駄だと理解したのか彼は大人しく自分の持ってきた弁当を食べ始めていた






チャイムがなった所で作業終了

絵の具がベッタリと付いている筆を水洗いバケツの中に突っ込む

隣に人気を感じ後ろを向くとそこにはまだ彼がいた

「…先輩、まだ居たんですか?」
「居たらダメだった?」
「別にダメではないですけど、もっと時間を有効活用した方がいいのでは?」

折角の昼休みに美術室へ来るなんて
教室でクラスメイトと話をしたりしている方がよっぽど良いと思う

「俺は彩華ちゃんが絵を描いている所を見るの好きだから」
「…そうですか」
「うん、俺彩華ちゃんの絵凄く好きなんだ」

そこで思い出されるのは冒頭の言葉

【俺、彩華ちゃんが好きだよ】

という言葉は実は

【俺、彩華ちゃんの'絵'が好きだよ】

だったのだ

……あぁ、そうか彼は私の絵が好きなのか
それならそうと言えばいいのに
こんな私の描いた絵を好きだと言ってくれる人がいる事はとても喜ばしい事だ
口元が緩んでしまうのも無理はない

「ありがとうございます」
「っ!」
「及川先輩が私の絵が好きだなんて知りませんでした。絵を描く人にとって、好きだと言われること以上の褒め言葉はありません」
「か、かかか…っ!」
「(蚊?)…絵が完成したら及川先輩にも是非見て頂きたいです」
「も、勿論!!!」
「あ、それと言い忘れてたんですけど、主語はちゃんとつけた方がいいですよ?」
「主語??」
「はい、一番最初に言ってたのって私の絵が好きだって事ですよね?」
「え、」
「私だったから良かったものの、ほかの女子だったらきっと勘違いしてたかもしれないですから。あ、でも及川先輩は口癖のように言ってるんでしたっけ」


私がそう言うと何故か彼はガックリと肩を落としたのだった